2013年(平成25年)に成立した障害者差別解消法2016年(平成28年)4月に施行されました。

この法律は、国連の「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」の締結のために必要な国内法の整備の一環として制定されたものです。

内容としては、障害者基本法の基本原則を踏まえ、差別禁止に関する規定を具体化し、それが守られるための措置などが定められています。

この新しい法律が施行されることによって、どのようなことが変わるのでしょうか。

ということで、この法律の内容を簡単に説明していきます。

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障害者差別解消法の目的は?

この法律の正式名称は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。

目的

障害者差別解消法は、行政機関や事業者における障害者に対する障害を理由とする差別を解消することを目的としています。

そのために、行政機関や事業者の取るべき措置などを規定しています。

障害者とは

この法律でいう障害者とは、

  • 身体障害
  • 知的障害
  • 精神障害(発達障害を含む)
  • その他の心身の機能の障害

があって、障害や社会的障壁により継続的に日常生活や社会生活に相当な支障がある状態の方のことをいいます。

この法律では、「障害」を幅広く捉え、難病に起因する障害や発達障害も含まれることになっています。

障害者差別解消法のポイント

この法律の主な内容は以下の5つです。

  • 政府の差別解消推進に関する「基本方針」作成義務
  • 行政機関等における差別禁止
  • 民間事業者における差別禁止
  • 国や地方公共団体等の職員「対応要領」作成義務
  • 民間事業者のための「対応指針」作成義務

順番に見ていきましょう。

政府の差別解消推進に関する「基本方針」作成義務

政府は差別解消を推進するために、その施策に関する基本方針を定めなければならないことが規定されています。

この基本方針は、施策の基本的な方向、行政機関等が構図べき措置に関する基本事項、事業者が構図べき措置に関する基本事項を定めることになっています。

行政機関等における差別禁止

行政機関等というのは、国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体および地方独立行政法人のことをいいます。

差別禁止

この行政機関等において、障害者の障害を理由に不当な差別的取り扱いを禁止することが規定されています(法的義務)。

不当な差別的取り扱いというのは、障害者であることを理由に、正当な理由なくサービスの提供の拒否や制限などをすることをいいます。

配慮義務

また、行政機関等は、障害者から日常生活や社会生活上の障壁の除去が必要である旨の意思表明があった場合に、合理的配慮を行う義務があります(法的義務)。

合理的配慮というのは、年齢、性別障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をすることをいいます。

例えば、車いすの方への手助けや、筆談や読み上げによる対応などがあげられます。

この合理的配慮を行わない(合理的配慮の不提供)場合は、不作為による差別になります。

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事業者における差別禁止

この法律でいう事業者とは、商業その他の事業を行う者のことをいい、営利・非営利、個人・法人は問いません。

なお、事業者の雇用分野については障害者雇用促進法によることになります。

差別禁止

事業者においても、事業を行うにあたり、障害を理由に不当な差別的取り扱いをすることが禁止されています(法的義務)。

ここでいう事業というのは、営利・非営利を問わず、反復継続して行われる行為のことをいいます。

事業者における不当な差別的取り扱いは、例えば、障害を理由とする入店拒否や、サービスの不提供などを指します。

配慮義務

事業者において、 障害者から日常生活や社会生活上の障壁の除去が必要である旨の意思表明があった場合には、合理的配慮を行うように務める義務があります(努力義務)。

事業者における配慮義務は、行政機関等とは違って努力義務になり、合理的配慮を「行う」義務までは規定されていません。

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事業者に対する行政措置

主務大臣は、事業者が障害者に対する差別を行っている場合など、特に必要な場合は、報告を求めたり、あるいは助言、指導、勧告をすることができます。

報告の求めに応じなかったり、虚偽の報告をした場合には罰則があります。

このような措置をとることにより、差別解消の実効性をはかります。

国や地方公共団体等の職員「対応要領」作成義務

行政機関等における差別禁止や配慮義務について、個々の場面に応じたガイドラインを定めることとされています。地方公共団体の場合は、努力義務になります。

職員が具体的な場面に応じた「対応要領」を定め、それに基づく対応が求められます。

民間事業者のための「対応指針」作成義務

主務大臣は事業者における差別禁止や配慮義務について、適切に対応するための「対応指針」を定めることとされています。

事業者は、その対応指針に基づいて個々の場面に対応することが求められます。

さいごに

以上、障害者差別解消法のポイントについて説明してきました。

なお、同時期に施行される障害者雇用促進法の改正内容については、以下の記事に書いていますのでよろしければ参考にしてくださいね。

改正障害者雇用促進法のポイント

国や地方公共団体など行政機関や事業者における差別禁止が実質的に実現されるための規定が盛り込まれているといえますね。

この法律の施行をきっかけに、差別のない社会の実現に進んでいってほしいと思います。

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