進学や就職、転職などを機に、今住んでいるアパート・マンションから引っ越す際に気になることの一つが敷金(しききん)

そもそも返金されるのか、返金されるとしても額はいくらなのか・・・

入居の際に一通り説明は受けたはずですが、やはり気になりますよね。

実は敷金の返還をめぐるトラブルは多いのです。

その理由の一つは、法律に敷金について規定が乏しいために、不明瞭な契約を結ばされていることがあります。

最近民法が改正されるということがニュースになっていますが、その改正の中で敷金についての不明瞭さを減らすために新しい規定が追加されます。

 

Sponsored Links

この記事では民法改正の中で敷金にまつわる規定について説明していきます。

ちなみに民法改正全般についての記事は以下を参照してください。
民法改正を簡単にわかりやすく!いつから何が変わる?

民法改正で変わる敷金関係の規定について

敷金関係についての改正点のポイントは以下の3つです。

  1. 敷金の意味がはっきりと明記された
  2. 敷金は原則として返還しなければならない
  3. 敷金から引くことができる債務の範囲について

 

実務上は、これまでも上記のようなことを前提に運用がされてきましたので、民法改正後も大きな混乱はないだろうといわれれています。

しかし、きちんと法律で明文化されることで、ルール違反は減っていくことが期待されます。

では順番に見ていきましょう。

民法改正・敷金

1.敷金の意味がはっきりと明記された

これまで、法律には敷金というものについて定義されていませんでしたが、今回の改正で以下のように定義されます。

敷金とは以下のように説明されています。

いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。

出典:民法の一部を改正する法律案(閣法 63号)

 

つまり、賃料やその他原状回復費用など、借主(賃借人)が負担する金銭債務が支払われない場合の補填目的(担保目的)で、支払ったお金のことを敷金といいます。

このような担保目的で賃借人が支払ったお金ならば、契約時に敷金という名前で払ってなかったとしても、民法上の敷金となります。

例えば、関西地方で言われるような「保証金(ほしょうきん)」というものも上記のような目的のお金であれば、民法上の敷金となります。

2.敷金は原則として返還しなければならない

民法改正による敷金の規定の追加によって賃貸人は賃借人に敷金を返金しなければならないことが明記されます。

返還しなければならないのはいつ?

以下の二つを満たす場合、賃貸人は敷金を返還しなければなりません。

  • 賃貸借が終了した
  • 賃貸人が賃貸物の返還を受けた

要するに、賃貸借契約が終了して賃借人が部屋を明け渡した時点になります。

契約が終了しても賃借人が出て行っていない場合はダメです。あくまで二つを満たす必要があります。

この他に、賃借人が賃借権を譲渡した場合も賃貸人は旧賃借人に敷金を返還しなければならないという規定も追加されています。

Sponsored Links

 

礼金・敷引きは?

ちなみに礼金(れいきん)敷引き(しきびき)についてですが、現行民法上も改正法においても規定はありません

礼金とは、特に関東地方において貸主(賃貸人)に支払う一回限りのお金で、挨拶程度の意味で返還されることは想定されていないことがほとんどです。

関西地方においては敷引き特約というものがあり、礼金と同じような趣旨と捉えられることが多いのようです。

契約書の書き方にもよりますが、敷金として受領した金銭のなかから引いて返さないという意味に捉えると、今回の改正による敷金の定義からすれば許されない可能性があります。

他方、受領した敷金から引くというのではなく、敷金とは別名目の料金と捉えれば問題はないとの解釈も可能かもしれません。どのような運用になっていくのか若干不透明です。

敷引き特約の有効性については、ケースバイケースで裁判例の見解が分かれていた経緯などを考えると、民法改正後も一筋縄ではいかないかもしれません。

3.敷金から引くことができる債務の範囲について

敷金は返還されなければならないとしても、無条件に全額というわけではありません。

いくら返還される?

改正法では、「賃貸借に基づいて生じた金銭債務」は敷金を充当してもよい(引いてもよい)ことになります。

例えば以下のようなものです。

  • 賃料
  • 原状回復費

賃料に未払いがある場合は、敷金から引くことは可能ですし、原状回復費用がかかった場合も敷金から引くことはできます。

原状回復費とは、賃借人が部屋を出て行くときに借りる前の部屋の状態に戻す義務がありますが、そのためにかかる費用のことをいいます。部屋を汚したり壊したりしていた場合などに必要になります。

しかし、何が原状回復費用になるかでトラブルになりやすい点です。

原状回復義務について通常使用による損耗や経年変化は除外

改正法では、普通に賃貸物を使用していれば生じる損耗や、経年変化については、原状回復する義務は無いということを規定しました。

例えば、普通に生活していてれば生じる傷みや経年変化による色あせなどついては、賃借人は原状回復する義務は無いということです。

こういった点の修復費用も原状回復費用として敷金から引くことはできないということですね。

さいごに

以上が、主な改正点になります。

敷金に関する改正点は、これまでの判例や国土交通省のガイドラインを明文化したものですので、改正されたとしても実務上の大きな混乱はないと予想されています。

民法改正案は2017年5月26日、参議院で可決、成立し、2020年をめどに施行される予定になっています。

いよいよ民法改正が現実のものとなりましたので、しっかりと準備していきましょう。

Sponsored Links