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少年事件で実名報道は許される?少年法との関係は?

公開日: : 最終更新日:2015/07/29 刑事法関連, 法律



重大な事件を起こした少年実名で報道することは許されるのでしょうか?

世間を騒がせるような事件を起こした少年について、一部のマスコミが実名で報道することがあります。

そのたびに、実名報道の是非や報道のあり方などが議論されます。

この実名報道って、一体何が問題なのでしょうか。

一番のポイントは違法かどうかということだと思われますが、まずは実名報道の賛成派と反対派のそれぞれの理由を見てみましょう。

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実名報道賛成派の理由

まずは賛成意見の理由です。

  1. 少年犯罪の抑制になる
  2. 報道の自由・国民の知る権利がある
  3. 被害者は実名で報道される
  4. 情報はネット上で出回る
  5. 少年法61条は実名で報道されない権利は与えていない

 

1.は、少年であっても実名で報道されることにより、重大事件の犯人として世間に知れ渡ってしまうというプレッシャーで、少年犯罪が抑制されるのではないかというものです。

少年の中には、実名報道がされないということでたかを括っているかのような意識の少年もいるようです。

2.は、憲法で保証される「表現の自由」の一環として、報道の自由国民の知る権利があるというものです。

もっとも、これらの権利も無制限に認められるものではないため議論の余地はあります。

3.は、犯罪の被害者は実名や顔写真のほか、さまざまな情報まで報道されてしまうことが多いのに比べ、加害少年の情報は一切報道されないのは釣り合わないというものです。

しかし、この理由に対しては、被害者についての報道を問題にすべきであって、加害少年の実名報道をすることの理由にはならないという反論もあります。

少年事件の実名報道

4.は、加害少年の実名報道をマスコミがしなくても、インターネット上では必ずと言っていいほど、どこかから加害少年を特定できる情報が出回るので、実名報道を禁止する意味が無いというものです。

しかし、ネット上に出回ることは結果論であり、実名報道を禁止する積極的な理由にはならないといわれています。

5.は、少しわかりにくいですが、過去に少年の実名報道が名誉毀損になるかが争われた裁判で、大阪高等裁判所は「少年法61条は・・・実名で報道されない権利を付与していると解することはできず・・・」とし、さらに一定の場合には実名報道しても「違法とはならない」としたことを理由とするものです。

もっとも、この判断はその事件に限ってのもので、一般的な法的効力はありませんので、この判断が即、実名報道が許されるということにはなりません。ただ、大いに参考にはなる見解ではあります。

実名報道反対派の理由

次に反対意見の理由です。

  1. 少年法に違反している
  2. 更生の可能性を害する
  3. 加害少年の周辺人物に迷惑がかかる
  4. 「ヒーロー」として模倣されるおそれがある

 

1.は、少年法61条に反しているというものです。少年法61条の規定は以下の通りです。

家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

これに該当する少年を実名報道すれば、これを素直に読む限り違反になります。

2.は、実名報道をすれば、加害少年が性格の矯正などを行う環境が害され、更生が妨げられるというものです。

少年法は、処罰することよりも少年の更生に重きを置いているため、実名報道には消極的になっています。

3.は、実名報道がされると、加害少年だけでなく家族や親戚など無関係の人まで特定されてしまい、平穏な日常生活が阻害されるというものです。

報道の仕方にもよりますが、やはり近親者などが特定されてしまうのは避けがたいことでしょう。

4.は、実名報道で加害少年の姿がリアルになった結果、同年代の少年たちの中から加害少年をヒーロー視した模倣犯が出てくるおそれがあるというものです。

反抗期にある少年たちが、加害少年をよりリアルに感じられることで、模倣犯がでるという可能性は否定できないかもしれません。

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実名報道の基準ってあるの?

報道機関はどんな基準で少年事件を実名で報道するのでしょうか。

ご存知の通り、全ての少年事件で実名報道がされるわけではありません。

日本新聞協会は「少年法第61条の扱いの方針」を定め、原則として少年事件の実名報道はしないとしつつも、少年の保護よりも社会的な利益を保護すべき場合(例えば、逃亡中でさらに凶悪な累犯が明白に予想される場合や、指名手配中の犯人捜査に協力する場合など)は例外としています。

それ以外に明確な決まりがあるわけではありませんが、事件の性質や社会的影響、加害少年の経歴などを総合的に考慮して掲載に踏み切ったとする週刊誌もあります。

週刊誌などは個別の事件を多角的にみて判断しているという感じですね。

実名報道したマスコミはどうなるの?

では、実際に実名報道した報道機関はどうなるのでしょうか。大きく以下の点が問題になります。

  • 刑事責任
  • 民事責任

では順番にみていきましょう。

刑事責任

刑事責任とは、罪を犯したことに対して刑罰を受けなければならないという責任です。

少年法61条に罰則なし

少年法61条に該当する少年の実名や顔写真など本人と特定できるような情報を掲載した場合、形式的には少年法61条に違反したことになります。

しかし、この法律、以前は「1年以下の禁固、1000円以下の罰金」という罰則(ばっそく)がありましたが、現在は廃止されていてなくなっています。

名誉毀損罪になる?

少年法に罰則がなくても、名誉毀損罪(刑法230条)という罪に問われる可能性は指摘されています。

しかし、この罪は親告罪のため少年側の告訴がないと捜査機関は動けませんし、名誉毀損罪の要件も満たす必要がありそれなりのハードルがあります。

ということは、少年法61条に反して実名報道をしても、事実上刑事罰が課されない可能性は高いといえるかもしれません。

また、法律がこのような状態になっていることから、少年法61条は自主的に遵守することが求められる規定であるとの見方もあります。

民事責任

もっとも、国から罰せられることはなくても、少年側から名誉権やプライバシー権侵害などを理由に民事上の損害賠償請求をされる可能性はあります。

過去には少年側の主張が一部認められた裁判があります。

当然ながら、凶悪犯罪を犯した少年だからといってどんな報道をしてもよいということにはなりませんので、少年側に報道による損害が認められれれば、報道機関は賠償責任を負うことになります。

結局のところは・・・

賛成派と反対派のそれぞれの主張をみてきましたが、実際問題として決着はついていません。

ただ、最近興味深いことがありました。それは、2016年度に使用される教科書の教科書検定の結果です。

ある「公民」の教科書に、死刑が確定した元少年の実名や写真が報道された過去の「新聞記事」が掲載されていましたが、検定意見がつき、個人が特定できる部分はボカシをいれて合格という形になったそうです。

国(文部科学省)としては、罰則が無いとはいえ、少年法に明確に反している新聞記事をそのまま教科書に掲載することはできないという立場なのでしょう。

新聞記事の引用であっても、法律に反する内容を黙認することはできないというのはある意味当然かもしれません。

ということは、国としてはあくまで現在の少年法の通り、少年事件の実名報道は認めていないということになりそうです。

しかし、罰則が廃止されているということや、賛成派の理由5.で紹介した裁判例や実名報道賛成の世論が強くなっていることからすると、今後少年法61条は変えたほうがいいのではないかという空気が強くなってきているといえます。

今後も少年事件で実名報道をするメディアが現れるとまた同じ議論を繰り返す可能性はありますが、世間の反応は、実名報道に賛成の意見が強いことから、少年法61条の改正に徐々に近づいていく可能性はあります。

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