トランス脂肪酸というと、あまりよくない印象がありますが、どんな食品に多く含まれているのでしょうか?
トランス脂肪酸はマーガリンというイメージがあるかもしれません。
しかし、それ以外にもたくさんの食品に含まれていて、中には意外な食品にも含まれていたりします。
ということで、日本のどのような食品にトランス脂肪酸が含まれているのか、多い順にみていきたいと思います。
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日本に出回るトランス脂肪酸が多めの食品
では、どんな食品にトランス脂肪酸が多く含まれているのか見ていきましょう。
以下のカッコ内の数字は、トランス脂肪酸の含有量(g/100g)になります。
<油脂類(0.0~31)>
- マーガリン(0.94~13)
- ショートニング(1.2~31)
- ファットスプレッド(0.99~10)
- バター(1.7~2.2)
- 食用植物油(0.0~1.7)
- 食用調合油(0.73~2.8)
- 牛脂(2.7)
- ラード(0.64~1.1)
<菓子類(0.026~7.3)>
- ショートケーキ
- アップルパイ、ミートパイ
- スポンジケーキ
- イーストドーナツ
- 菓子パイ
- 半生ケーキ
- ビスケット
- クッキー
- ポテトスナック
- その他スナック(小麦粉主原料)
<乳類(0.48~12)>
- プロセスチーズ
- ナチュラルチーズ
- コーヒークリーム
- 生クリーム
- コンパウンドクリーム
<穀類(0.29~13)>
- クロワッサン
- 味付けポップコーン
<肉類(0.52~1.5)>
- 和牛(肩ロース)
- 和牛(サーロイン)
- 輸入牛(サーロイン)
- 牛(ハラミ)
参照元:http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content.html
ショートニングもトランス脂肪酸が含まれているということはご存知の方もおられるかもしれませんが、マーガリンよりも含有量が高い場合があるのですね。
お菓子や乳製品、お肉類にも、多少なりともトランス脂肪酸は含まれているわけですね。
実のところ、トランス脂肪酸は人の体にとってどの程度悪いものなのでしょうか。
海外でトランス脂肪酸の規制について何か動きがあると、危険性がクローズアップされます。
しかし、同時にそれに対して、日本は大丈夫だとか、あまり心配する必要はないといった指摘もされます。どちらを信じればいいのでしょうか。
ということで、そもそもトランス脂肪酸とはどういったものなのかについて、少しおさらいしておきましょう。
トランス脂肪酸とは?
トランス脂肪酸(とらんすしぼうさん)〔trans-fatty acids〕は、トランス不飽和脂肪酸ともいわます。
これは、以下のような場合に生成されます。
- 液状の植物性油を固体状態にするために水素を添加する場合(マーガリンなどをつくる場合)
- 植物油を脱臭・脱色のために高温で精製する場合
- 調理の際に食用油を高温に過熱した場合
以上のような場合に出来てしまうというわけで、トランス脂肪酸という名の食品添加物があるのではなく、製造過程で生じる副産物のようなものがトランス脂肪酸なわけですね。
トランス脂肪酸は危険なの?
トランス脂肪酸の危険性については、すごく危険だと言っている人も、日本ではあまり心配がないと言っている人も、大量に摂取することにより、心臓病などを引き起こすリスクが高くなるということでは一致しているようです。
大量に摂取するということが危険なわけですね。
トランス脂肪酸によって誘発されやすい病気
心臓病以外に、トランス脂肪酸を体内に取り入れることによって引き起こされる病気としては以下のものがあげられます。
- 心疾患(心筋梗塞など)
- ガン(前立腺癌、乳癌など)
- 糖尿病
- メタボリックシンドローム
- 加齢黄斑変性
- 不妊症
- 子宮内膜症
- うつ病
- 認知症
- 発達障害
参照元:山田豊文著『なぜ、マーガリンは体に悪いのか?』健康人新書、廣済堂出版
摂取量の目安は?
ではどのくらい摂取すれば危険なのかということですが、目安は農林水産省が公表しているところによると、総エネルギー摂取量の1%未満、日本人の平均に直すと一人一日当たり約2グラム未満が目標量になるようです。
日本人の平均摂取量はその目安を大きく下回っているというデータがあります。
先ほど紹介したトランス脂肪酸が含まれる食品の数値は100gあたりの含有量ですが、なんとなく日本人の一日あたりの食事でイメージしてみると・・・2グラムには届かないのではないでしょうか。
お肉類はちょっと微妙かなという気もしないではないですが。
アメリカが禁止したワケ
アメリカがトランス脂肪酸を「全廃」や「禁止」するという報道がありましたが、どういったことなのでしょうか。
アメリカが最近禁止したというのは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が、先ほど紹介したトランス脂肪酸が生成される場合の1.(マーガリンなどをつくる場合)にできるトランス脂肪酸を安全な物質としては認めないということで、これを3年後の2018年6月以降には禁止するということのようです。
要するに、これまでトランス脂肪酸を「安全な物質」として認めていたものを、今後はリストから外しますよということです。
あくまで、1.の製法で作られる部分水素添加油脂だけが禁止対象で、それ以外で生じるトランス脂肪酸は禁止されません。
しかし、1.でできるトランス脂肪酸が主なトランス脂肪酸の摂取源だったので、トランス脂肪酸の摂取を減らすという効果は大いに期待できることでしょう。
なぜアメリカがこの様な規制をするのかというと、アメリカ人に心臓疾患が多いのは、トランス脂肪酸の摂取量の多さが原因の一つと考えられているからです。
アメリカ人の1日の平均摂取量は、日本人と比べて2倍(規制を始める前は7倍)ほどというデータがあります。
そして、アメリカ人の死因のトップが心臓疾患だということからすると、規制をしたほうがいいということになったのでしょう。もちろん心臓疾患はトランス脂肪酸だけが原因ということではないですが、主要な原因の一つと推測されています。
日本での規制は?
では、日本ではどういった規制があるのかというと、直接何らかの規制がされているわけではありません。
またトランス脂肪酸の食品への表示義務もなく、消費者庁による「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」があるくらいです。
トランス脂肪酸の表示はメーカーが任意で表示しているに過ぎません。
これまでトランス脂肪酸の表示義務化については検討されてきてはいますが、実現には至っていません。
アメリカで規制されていて日本で規制がされていないのは、アメリカと比べて日本は摂取量が大幅に少ないだけでなく目標値も下回っており、悪影響が確認されていないからです。
減らす努力をしているメーカーもある
管理人は決して企業の回し者ではありませんが、トランス脂肪酸については、企業によっては情報開示をしたり、減らそうと努力しているところもあり、食品メーカーも手をこまねいているわけではないと思います。
食品メーカーもお客様商売ですから、お客が嫌がるようなことは極力やらないでしょうし、改善も重ねているはずです。
事実、数年前と比べてトランス脂肪酸が減っている商品もありますし、トランス脂肪酸の発生が少ない製法をウリにしたマーガリンといったものも出てきています。
例えば、以下のような企業は、トランス脂肪酸についての情報提供や、トランス脂肪酸に対する見解などを公表していますので、商品選びの参考にされてはいかがでしょうか。
- 山崎製パン
- 敷島製パン(Pasco)
- 雪印メグミルク
- 神戸屋
- 創健社
- ハウス食品
- 日清オイリオグループ
- 日本生活協同組合連合会
さいごに
日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、アメリカよりも大幅に少なく、目安となる目標値を大きく下回っていることから、日本ではトランス脂肪酸の規制は行われていないということでした。
しかし、トランス脂肪酸が体に良いというわけではありませんし、微量だから絶対に大丈夫だというデータもありません。
放射線量の議論にも似ていますが、たとえ微量であっても体内に取り入れないにこしたことはないといえます。
ですから、値段の安さ、便利さ、おいしさと、化学物質による危険性のリスクをどのようにバランスをとるかということになるのではないでしょうか。
多少費用がかかって、しかもあまりおいしくなくても、リスクをゼロに近づけたいという方はその選択もありだと思いますし、多少のリスクは承知で値段の安さ、便利さ、おいしさを選ぶという選択肢もあります。
しかし、こういった選択をするためには、どのような物が使われているのか、含まれているのかという情報が伝わっていることが必要です。
ですから、表示という点についてはしっかりと行っていただきたいところですね。