「飲んだら乗るな、飲むなら乗るな」とは誰もが耳にしたことのある標語ではないでしょうか。
ほとんどのドライバーはこれを肝に銘じていることと思います。
もっとも、飲酒運転に縁がなければないほど、お酒を飲んで運転すると重い処罰が待っているというイメージはなんとなく持っていても、「酒気帯び運転」とか「酒酔い運転」などの違いについてはあいまいになってしまいがちです。
アルコールの量や酔いの程度によって、処罰されるかどうかや、処罰される場合の程度の重さに違いがあります。
それらがよく言われる「酒気帯び運転」や「酒酔い運転」の違いです。
この記事では、その違いなどについて説明していきたいと思います。
量を問わず飲酒運転は違法
まずは大原則です。
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
出典:道路交通法65条1項
量に関わらずお酒(アルコール)を帯びた状態で運転することは法律で禁止されています。
酒気を帯びるというのは、顔色や呼気などの外観上、酒気を帯びていると一般的に認められる状態のことです。
理由は言うまでもなく、お酒を飲んだ状態では正常な運転に関する操作や判断が鈍くなって事故などを起こす危険が高まるからです。
酒酔い運転と酒気帯び運転の違い
たとえわずかな量であってもお酒を飲んで車両等を運転することは違法です。
しかし、罰則が定められているのは一定の基準を超えた場合です。
その基準が以下の二つで前者が酒酔い運転、後者が酒気帯び運転です。
酒酔い運転
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの
出典:道路交通法117条の2第1号
「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」とは具体的にどんな状態であるのかについて、実は具体的な数値などを定めた規定はありません。
では、どのように判断されるのかというと、現場の警察官がドライバーの
言動や態度、直立や歩行の能力、酒の臭い、顔色や目つきなど
を専用のチェックシートを用いて総合的に判断されます。
たくさんの量を飲んだ場合に、この酒酔い運転であると判断される可能性は高まりますが、お酒に強いか弱いか、あるいはその時の健康状態などによっても変わってきますので、一概にお酒の量だけで判断できるものではありません。
罰則・処分
この場合の罰則は五年以下の懲役又は百万円以下の罰金です。
違反点数は35点です。
一発で免許取り消し処分になります。
自転車もアウト!車両等とは?
条文には運転してはいけない乗り物として「車両等」と書かれていますが、その
「車両等」とは、
自動車、原動機付自転車、軽車両、トロリーバスと路面電車
のことです。
この中の「軽車両」というのは
自転車、荷車、人や動物の力または車両で牽引されるものなどで、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの
のことです。
ここで注意が必要なのは、自転車も含まれるということです。
つまり、自転車で酒酔い運転をすると、処罰の対象になるということです。
酒気帯び運転
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの
出典:道路交通法117条の2の2第3号
こちらは先ほどの酒酔い運転とは違い、「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」と基準が書かれています。
「政令で定める程度」というのは、以下です。
第44条の3 法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。
出典:道路交通法施行令44条の3
人によって異なりますし、時間の経過によりますので一概には言えませんが、呼気1リットルの濃度が0.15ミリグラムというのは、大まかな目安としてビール1杯程度という見解があります。
またアルコールが抜けるのは、これも人によりますがビール1杯でも最低3~4時間程度はかかると考えられます。
罰則・処分
酒気帯び運転の罰則は三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金で、先ほどの酒酔い運転の罰則よりは少し軽くなります。
違反点数は呼気1リットルのアルコール濃度が
- 0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満 は13点
- 0.25ミリグラム以上は25点
となります。
前者は、前歴(過去3年以内の免許停止処分の回数)がゼロの人で免許停止処分、それ以外の人は一発で免許取り消し処分になります。
後者は全員、免許取り消し処分になります。
運転してはいけない車両は?
酒気帯び運転の場合は、「車両等(軽車両を除く・・・」とかかれています。
ですから、酒酔い運転のところでみた軽車両は含まれず、
自動車、原動機付自転車、トロリーバスと路面電車
が対象になります。
罰則が適用されない場合は?
以上が、罰則のある基準についてでした。
ここで気になるのは、その基準に当てはまらない飲酒運転はどうなるの?ということです。
つまり、お酒を飲んではいるものの「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」というわけでもないし、酒気帯び運転として検挙されるアルコールの基準値にあるわけでもないという場合です。
この場合でも、はじめの大原則で書きましたように「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」という道路交通法65条1項には違反しますので、違法です。
しかし、罰則は適用されませんので、違反切符などは切られることはありません。
ただ違法であることには変わりないので、「今後は二度としません」といった旨の誓約書にサインを求められることがあります。
さいごに
以上、酒気帯び運転と酒酔い運転の基準や罰則、対象となる車両などについて説明してきました。
酒酔い運転については、自転車も処罰の対象になるのは注意が必要です。
罰則が存在しないところもありますが、違法であることに変わりはなく、そこまでは大丈夫ということには絶対になりません。
自転車、自動車、二輪車など車両を問わずお酒は一滴たりとも飲んで運転してはいけません。
その点は肝に銘じて安全運転を心がけていきましょう。
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