古物商(こぶつしょう)というと、言葉の響きからはアンティークな商品を売買する人といったイメージがありますが、実際の意味はそればかりではありません。
アンティークなものだけでなく、最新の製品でも中古のものや、一度も使用していない新品のものでも売り買いすることで古物営業法の範囲の取引になることがあります。
最近では、リサイクルショップや副業として中古品を売り買いする人も増えてきているので、古物営業法を気にされる方も多いかもしれません。
そういった方々のために、古物商とはどういう人のことなのか、あるいは古物市場主の意味などについて古物営業法をもとに説明していきます。
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古物営業法の目的
そもそもなぜ古物営業法といいうものがあるのかというと、この法律の目的にヒントがあります。
古物営業法は以下のことを目的としています。
- 盗難品の売買の防止
- 盗難品の早期発見
- 盗難品を被害者へ返却
要するに、盗難された物(窃盗被害にあった物など)が売買されることや、被害品を被害者のもとへ戻りやすくすることなどを目的としているわけですね。
盗まれたものが中古品市場で堂々と流通するようになれば、窃盗の犯人がお金儲けしやすくなり、ひいては窃盗犯を助長することにもなりかねません。
そういったことを防止するためにこの法律があります。
「古物」とは?
では、「古物(こぶつ)」とはどのようなもののことを意味するのでしょうか。
それは以下のように規定されています。
第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
出典:古物営業法2条1項
つまり、
- 一度使用された物品
- 使用されない物品で使用のために取引されたもの
- 上記いずれかの物品に手入れをしたもの
のことをいいます。
ここでいう「使用」とは、その物本来の使い方のことで、例えば美術品なら鑑賞、商品券なら商品の購入などです。
また、3つ目の「手入れ」とは、その物本来の性質を保持したままメンテナンスを行うことで、大型機械類であれば整備することなどです。
古物は古物営業法施行規則で13品目に分類されています。
一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
二 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
三 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
四 自動車(その部分品を含む。)
五 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)
六 自転車類(その部分品を含む。)
七 写真機類(写真機、光学器等)
八 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
九 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
十 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
十一 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
十二 書籍
十三 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令 (平成七年政令第三百二十六号)第一条 各号に規定する証票その他の物をいう。)
出典:古物営業法施行規則2条
「古物営業」とは?
では次に「古物営業」について説明していきます。
「古物営業」は、以下の3つのことであると規定されています。
一 古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの
二 古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。以下同じ。)を経営する営業
三 古物の売買をしようとする者のあつせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他の政令で定めるものに限る。)により行う営業(前号に掲げるものを除く。以下「古物競りあつせん業」という。)
出典:古物営業法2条2項
一 (1号営業)について
「一」(1号営業)ですが、古物について以下のいずれかの営業をすることです。
- 売買・交換
- 委託を受けて売買・交換
少し噛み砕いて説明すると、1号営業に当たるのは、
- 古物を買い取って別の人に売却すること
- 古物を別のものと物々交換すること
- 古物を手数料を取って委託販売すること
が含まれている行為は古物商の許可が必要です。
売却方法は、インターネットオークションでの売却も含みます。
1号営業でないもの
以下のものは1号営業ではありません。
- 古物を売るだけの行為
- 自分が売った物品をその相手方から買い受けるだけの行為
要するに
- 自分の物を売ること(転売目的で購入した物は除く)
- タダでもらった物を売ること
- 処分料をもらって引き取った物を売ること
- 自分が売った物を同じ相手から買い戻すこと
といった行為には、許可は不要です。
後ほど説明しますが、古物営業法は盗難品が流通することを防ぐことが目的です。
上記二つの場合は、盗難品を扱う危険性が低いため、許可がなくてもいいとされています。
二 (2号営業)について
「二」(2号営業)は、古物商間の売買・交換のための古物市場(こぶついちば)を経営する営業のことです。
こちらは古物商でなくても利用できるフリーマーケットを主催する場合は含まれません。
三 (3号営業)について
「三」(3号営業)は、インターネットオークションサイトを運営することです。
こちらは、インターネットオークションに出品して売る人や、落札して買う人のことではなく、オークションサイトを開設して運営することになります。
古物営業許可が必要な場合
これまで古物営業とはなにかについて説明してきましたが、古物営業許可(古物商許可)が必要な場合について説明します。
古物営業許可が必要なのは、
- 1号営業を行う場合
- 2号営業を行う場合
です。
1号営業を行う場合は、営業所(営業所がない場合は住所又は居所)が所在する都道府県の公安委員会の許可が必要です。
2号営業を行う場合は、古物市場が所在する都道府県の公安委員会の許可が必要です。
両者とも、複数の県に営業所や古物市場を営む場合は、それぞれ許可が必要になりますが、同一の県に複数の営業所や古物市場を営む場合は、一つの許可ですみます。
ちなみに、3号営業をする場合は営業開始の日から2週間以内に届出書を提出する必要があります。
古物商と古物市場主とは?
「古物商(こぶつしょう)」とは、古物営業許可を受けて上記1号営業を行う人のことをいいます。
「古物市場主(こぶついちばぬし)」とは、古物営業許可を受けて2号営業を行う人のことをいいます。
ちなみに3号営業を行う人のことを「古物競りあつせん業者(こぶつせりあっせんぎょうしゃ)」といいます。
遵守事項
それぞれ守るべき事柄が定められています。
古物商が守るべきこと
古物商と古物市場主が営業をする場合、以下のことを守らなければいけません。
- 許可証(代理人、使用者、従業員には行商従業者証)の携帯
- 標識の掲示(ウェブサイト上で取引する場合は氏名または名称、公安委員会名、許可証の番号を表示)
- 管理者(責任者)の選任
- 営業所または取引の相手方の住所・居所以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取ることはできない
- 古物の取引の際の相手方の確認(住所、氏名、職業、年齢など)
- 古物を取引したことを帳簿等へ記載(三年間保存)
- 品触れを受けたときは、六月間保存
古物市場主が守るべきこと
古物市場主が営業をする場合、以下のことを守らなければいけません。
- 許可証(代理人、使用者、従業員には行商従業者証)の携帯
- 標識の掲示
- 管理者(責任者)の選任
- 古物商間以外で古物の取引をしてはならない
- 品触れを受けたときは、六月間保存
罰則
上記の遵守事項を守らなかった場合や、以下のような古物営業法に違反する行為には罰則があります。
- 無許可営業
- 不正に許可を受けた
- 名義貸し
違反内容によって異なりますが、刑は拘留、科料、罰金などの財産刑から懲役刑まであります。
さいごに
以上、古物商と古物市場主についての説明でした。
古物営業法の目的が盗難品が流通することを防止することと、仮に盗難品が市場に出てきたとしても早期に発見して被害者の手元へ戻りやすいようにすることです。
そのことを念頭においておくと、それぞれの決まりごとの意味がわかってくるかと思います。
ルールを守って健全な市場を保っていきたいですね。
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