配偶者の扶養義務とは一体何でしょうか?
配偶者というのは、夫からみて妻、妻からみて夫のことですね。
その配偶者を扶養する義務について、どのような点が気になってこの記事をお読みいただいているでしょうか。
配偶者の扶養義務という場合、大きく以下の二つにわけることができます。
- 配偶者が収入に乏しい場合に養わなければならないという民法上の扶養義務
- 会社などで社会保険に加入する際に配偶者を扶養家族として届け出る場合や履歴書に「配偶者の扶養義務」という欄がある場合などの社会保険上の扶養義務(扶養家族)
これらは似てはいますが、基本的に別々の制度ですので、一つずつわけて説明していくことにします。
ちなみに、履歴書を記入している際に「配偶者の扶養義務」という欄が出てきて意味がわからないという方は、後者のほうを参考にしてください。
Contents
1.民法上の扶養義務
民法には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。
とすれば、結婚して夫婦になればみんな配偶者を扶養する義務があるかと思ってしまいますが、実はそうでもないんです。
一定の条件を満たす場合に扶養義務が発生するのですが、その前にまず扶養義務とは何をすることなのかについてみていきましょう。
扶養義務ってなにをすればいいの?
一言で扶養義務といっても具体的に何をすればいいのかわかりにくいですよね。
配偶者の扶養義務は、生活保持義務(せいかつほじぎむ)と理解されていて、自分と同じ生活程度を保障すべき義務です。
要するに、配偶者が自分の生活水準と同じくらいの生活ができるように保障しなければならないということです。生活に必要な衣食住など費用を負担するということですね。
どんな場合に扶養義務があるの?
次の条件を満たす場合には、配偶者の扶養義務があります。
逆に言うと、以下の条件を満たさない場合には扶養義務はないということになります。
ですから、履歴書などに配偶者の扶養義務について、その有無を記入する場合には結婚している人全員が「有」というわけではないということになりますね。
- ①配偶者が扶養が必要な状態であること
- ②自分に扶養する能力があること
これらを二つとも満たさないと、扶養義務はありません。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
①配偶者が扶養が必要な状態であること
配偶者が「扶養が必要な状態」であるかどうかをどのように判断するのかということですが、一般的な感覚でいえば、配偶者が専業主婦(主夫)で収入がない場合が思い浮かぶと思います。
もちろんそれは正解ですが、配偶者に収入があったとしても標準家計費(総務省統計局の家計調査や地方公共団体の家計調査)などを目安にして、とても分担できるような収入が配偶者にない場合には「扶養が必要な状態」であるということになります。
②自分に扶養する能力があること
配偶者が扶養が必要な状態であっても、自分に扶養するだけの収入がなければどうしようもありません。ですから、自分に扶養するだけの収入があることが必要になります。
目安としては、先ほどの標準家計費、あるいは少なくとも最低生活保護基準程度の生活費を上回る収入があることが条件になります。
以上、二つの条件を満たしてはじめて、配偶者の扶養義務があるということになります。
2.社会保険上の扶養義務(扶養家族)
社会保険に加入する場合や履歴書に配偶者の扶養義務があるかどうかを書く場合は、これまで説明してきたような民法上の扶養義務ではなく、社会保険に加入する際に配偶者が扶養家族になるかどうかということが問題になっていると思われます。
配偶者の社会保険に差が出る
この場合、社会保険上の扶養家族と認められるかどうかで年金と保険に影響が出てきます。
厚生年金、共済組合に加入している人が配偶者を扶養家族にするには、その配偶者が
- ①年収が130万円未満でかつ、
- ②被保険者の年間収入の2分の1未満
であることが必要です。
この条件を満たしている場合は、会社などで社会保険に加入している場合は配偶者を扶養家族とすることができ、保険料などの点でメリットがあります。
ですから、履歴書で配偶者の扶養義務を記入する場合は、以上の点を満たしている場合は「有」満たしていない場合は「無」という記載でよいと考えられます。
履歴書などは…
例えば、すでに扶養家族になっている専業主婦(主夫)の方がパートやアルバイトの面接のために提出する履歴書には、配偶者は「有」でも、上の条件の少なくとも②は満たさないので、配偶者の扶養義務は「無」しということになります。
逆に、家計を支えている夫が転職活動をする際に提出する履歴書には両方とも「有」ということになる場合が多いでしょう。
さいごに
以上、配偶者の扶養義務について説明してきました。
配偶者の扶養義務といっても民法上のものと社会保険上のものとがあるためにわかりにくくなっているところがあります。
どちらの問題であるかを意識すればわかりやすくなると思いますよ。