自転車運転者講習制度が新しくスタートしてから、自転車に対する取締りが各地で行われ、自転車に乗っていてどんな行為が違反になるのかに注目が集まりました。

違反と知らずにやってしまって、取り締まられるということは避けたいですからね。

とりわけ議論になっているのは、自転車に乗りながらイヤホン(ヘッドホン含む)などをすることが違反行為になるのかどうかということです。

自転車に乗りながらイヤホンをすることについてなぜ議論になっているのかというと、少し複雑な事情があるからです。

大きく以下の三つの問題点があります。

 

  1. 違反行為になるかどうか
  2. 警察官に呼び止められるかどうか
  3. 自転車講習の危険行為に含まれるかどうか

 

ひとまずは、1.と2.を理解しておけばいいと思います。3.は非常に込み入った話になりますので、興味のある方は参考にしてください。

これらの問題点について一つずつ詳しく説明していきます。

 

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1.違反行為になるかどうか

イヤホン(ヘッドホン、ヘッドフォン、イヤホーン、イヤフォン)などをして自転車を運転することが禁止されているかどうかについては、実は法律には規定されていません。

どこに規定されているの?

どこに規定されているのかというと、各都道府県が定める道路交通法施行細則あるいは道路交通規則に定められています。

この細則ないし規則というのは、各都道府県が定める決まりで、内容は似通ってはいますが、都道府県によってばらつきがあります。

ここが話がややこしくなっている原因の一つ目です。

どのように規定されているの?

細則ないし規則に規定されている内容は、似たり寄ったりなことが多いですが、例えば東京都の場合は、東京都交通規則8条5号本文

高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。

出典:http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012199001.html

と規定されています。自転車は「車両等」に含まれます。

イヤホーン等」や「ラジオを聞く等」に「等」が書かれていますが、「等」の中にそれに類似するものが含まれると解釈されます。

ですから「イヤホーン等」にはヘッドホンは含まれますし、「ラジオを聞く等」にはCDやMP3プレーヤーは含まれると解釈されます。

ですから、「ヘッドホンやCD・MP3は書かれていないじゃないか」と反論することは困難です。

片耳なら大丈夫?

次に、「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態」という文言がありますが、片耳だけのイヤホンなら、もう一方の耳は外の音が聞こえる状態なので大丈夫だという議論があります。

神奈川県警察のサイトに、片耳のイヤホンはそれだけでは違反ではない旨の記載があることから、「片耳はOK」と思われる方もおられるかもしれません。

確かに片耳イヤホンの場合は違反にならない場合がほとんどだと考えられますので、感覚的にはそれでよいのだと思います。

しかし、法解釈的には「・・・音又は声が聞こえないような状態」であるかどうかが問題であって、片耳かどうかは大きな問題ではないのです。

ですから片耳であってもイヤホンをしていることに変わりはないわけですから、「・・・音又は声が聞こえないような状態」と現場の警察官に判断されれば、違反になります。

逆にいうと、そのような状態でないなら、両耳イヤホンをしていても違反にはならないということになります。

スピーカーは?

イヤホンがダメならスピーカーを積めばいいだろうという話もあるようです。

確かにおもしろい話ですが、スピーカーは上記規則の「カーラジオ等を聞き」の「等」に含まれると思われますので、「・・・音又は声が聞こえないような状態」であれば違反になってしまうでしょうね。

都道府県によって異なるので注意

以上、東京都の規則を例にして説明してきました。

ほとんどの道府県では、東京都と同じような規定になっています。

一部の県には、イヤホンなどに関する規定がないところもあります。

気になる方はご自身の県の警察本部のHPをご覧になるか、問い合わせるかをされるといいかもしれません。

 

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2.警察官に呼び止められるかどうか

これまでは、イヤホンをつけて自転車を運転することが違反になるかどうか、ということについてみてきました。

イヤホンをつけ、なおかつ安全運転に必要な音または声が聞こえない状態なら違反ということですね。

逆に言うと、イヤホンをつけていても、安全運転に必要な音または声が聞こえる状態なら、違反にならないということです。

外観からはわからない!

しかし、安全運転に必要な音または声が聞こえる状態であるかどうかは、取り締まる側の警察官からは、外観から判断することはほぼ不可能です。

ですから、イヤホンをつけて自転車を運転している人は、高い確率で警察官から呼び止められることになります。

この呼び止められたことをもって「捕まった」と表現される方は大勢おられます。

ここが話がややこしくなっている原因の二つ目です。

警察官は、声かけをすることによって、安全運転に必要な音または声が聞こえているかどうかをチェックしているものと考えられます。

声をかけられた時点ですぐ気がついて応じれば、聞こえているということですから、ほぼ違反にはならないでしょう。

そして、警察官から何かしらの注意喚起されて終わりだと思われます。警告カードも交付されないでしょう。

呼び止められる可能性は高まる

この一連の流れは、違反行為の取締りではありません。

この呼び止められた行為をもって、違反行為をしていたので捕まったということではないのです。

しかし、イヤホンをしていると、外の音が聞こえているかどうかは外観だけではわからないので、警察官から呼び止められる可能性は高まるといっていいでしょう。

聞こえているのに、すぐに応じなかったりすると聞こえていないと判断されかねませんので細心の注意が必要です。

こういったこともあり、外観的に紛らわしいイヤホンをつけての自転車運転はしないに越したことはありません。

3.自転車講習の危険行為に含まれるかどうか

冒頭で触れたように、自転車運転者講習制度がスタートして自転車の違反行為に対する取締りが厳しくなったと感じる方は多くおられると思います。

「14の危険行為」に含まれるの?

自転車運転者講習制度のパンフレットなどをお持ちの方はご存知かもしれませんが、この制度の対象になる「14の危険行為」というものがあります。

仮に、イヤホンをして安全運転に必要な音が聞こえない状態で自転車を運転していたとしましょう。この場合、これまでの説明からは違反行為になりますよね。

実は、この違反行為は「14の危険行為」に含まれるのかどうか、といった議論があるのです。

ここが話がややこしくなっている原因の三つ目です。

講習の義務が発生するのは?

3年以内に2回以上、「14の危険行為」のうちのいずれかをくり返した場合に、講習を受ける義務があります。

詳しくは以下の記事を参照してください。
自転車講習が義務化!14の危険行為と処分の流れを解説

講習を受ける義務があるのは、違反行為をして警告カードをもらうだけではカウントされず、赤切符による処理がされた場合です。赤切符というのは主に悪質と判断された場合です。

詳しくは以下の記事を参照してください。
自転車の赤切符は前科がつく?警告カードとの違いは?

安全運転義務違反とは?

14の危険行為」のうち、13までは具体的な内容になっていて、イヤホンをしながらの運転とは無関係なことは明らかです。

しかし、残りの一つに「安全運転義務違反」というものがあります。「安全運転の義務」というのが道路交通法70条に規定されていて、その義務に違反するというものです。

これにイヤホンの違反行為が含まれるのかどうかはっきりしません。

安全運転義務違反の行為とは、ハンドルやブレーキその他の装置を確実に操作して、安全な速度と方法で運転しているとはいえないような行為のことをいいます。

仮にイヤホンの違反行為をして赤切符を切られた場合、自転車講習の対象になる危険行為としてカウントされるのでしょうか。

実はその点について、いくつかの都府県警察に問い合わせてみましたが、見解はまちまちでした。

ただ、安全運転の義務というのは、抽象的な規定であるため処罰の対象となる行為が拡がりすぎる可能性があるため、この規定を根拠にイヤホンの違反行為などの行為(その他諸々の行為も含め)単体を取り締まるということはあまりないという運用がなされているようです。

では安全運転義務違反どのような場合に適用されるのかというと、事故を起こした時に、事故当時イヤホンをして必要な音が聞こえていない状態だったというような場合、イヤホンの行為を安全運転義務違反として取り締まる、といったことが多いようです。

あくまで事故という結果が発生してから過去を振り返って、安全運転義務に反していたと判断することが多いようです。

もちろん、全てがそうだとはいえませんので、ケースバイケースになってくるとは思われます。

赤切符を切られたとしても、都道府県が定める道路交通法施行細則あるいは道路交通規則に違反したという理由の場合は、14の危険行為にはあたらないので、講習の対象となる行為としてカウントはされないという回答をいただいた県警もありました。

全国全ての地域が同じような運用であるとは言い切れませんが、多くの地域では似たり寄ったりではないかと考えられます。

さいごに

以上、自転車でイヤホンをつけたまま運転することについての法令上の問題点について説明してきました。

法律に直接規定されていないこと、都道府県によって規定が若干異なること、講習制度との関連性という3つの複雑な問題点があり、当初予定していた文字数が多い記事になってしまいました。

交通安全のためにも、ご自身のためにも、とりあえず1.と2.を一通り理解していただければ大丈夫だと思います。

都道府県によって微妙に規定は異なりますので、気になる方は確認しておいてくださいね。

あとは、やはりイヤホンをしていると、外の音が聞こえているのかどうか、他人からはからはわかりづらいので、しないほうが無難だということはいえるかもしれません。

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