車の間をスイスイとすり抜けていくバイク。
そんな光景を見たことがある方はほとんどだと思います。
車が渋滞しているときや、流れがノロノロ状態のときなどの「バイクのすり抜け」走行って、違反にならないの?って疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
実はバイクがすり抜けすることについてのはっきりとした規定というものはありません。
規定がないのであれば、無条件にすり抜けをしていいのかというと、そう単純な話でもないようです。
バイクがすり抜けをする際に問題となってくると思われる条文はいくつかあります。
この記事では、そのあたりを中心にして、どういった場合のすり抜けがいいのか悪いのかなどについて説明していきたいと思います。
Contents
バイクのすり抜けとは
一概にバイクの「すり抜け」といっても、いくつかのパターンがあります。
まずこれらについて整理してみます。
バイクのすり抜けには、主に以下のようなものがあると考えられます。
- 赤信号や渋滞などで停止中の車列をすり抜ける
- ノロノロ運転中の車列をすり抜ける
- 普通に流れている車列をすり抜ける
これらが「すり抜け」の典型的な例ではないでしょうか。
1.と2.は車が停止しているかどうか、2.と3.は車が走っているスピードで区別します。
すり抜けについての法律はない!?
冒頭でも書きましたが、「すり抜け」そのものについて規定している法律はありません。
道路によっては「二段停止線」というものを設けているところがあり、これはすり抜けすることを前提としているかのようにも思えます。
禁止する法律がないならすり抜けOKなのかというと、当然ながらそうではありません。
すり抜けをする際に問題になってくる法律は存在します。
ただ結論的に言うと、たとえ取り締まりにはあわなくても、はっきりしない部分が残っています。
すり抜け時に注意すべき点
では、どんな内容の規定がすり抜けに関係するかというと、
- 車両通行帯(車線)
- 追い越し
- 割り込み
- 指定通行区分違反 黄色線を越えての車線変更
- 方向指示器 合図不履行(ウインカー)
- 信号無視!?
- 路肩と路側帯
のような規定です。
結構たくさんありますね。
一つずつ見ていくことにしましょう。
車両通行帯(車線)
車やバイクなどの車両は一番左の車線(3車線以上の道路では一番右以外の車線)を走らなければならないのが原則となっています(道路交通法20条1項)。
一番右の車線は追い越しや右折、その他法律の決まりがある場合以外は原則として走行できませんので、そういった場合以外のすり抜け行為はできません。
追越し
すり抜けといえば、追い越し行為と同じではないかと思われる方も多いかもしれません。
確かに、追い越しにあたる場合もありますが、そうでない場合もあります。
法律では以下のように規定されています。
二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
出典:道路交通法2条1項21号
つまり、追越しは前の車に「追い付いた場合」に、「進路を変えて」その車の「側方を通過」して「前方に出ること」です。
前の車に追い付いていない場合に進路変更して前に出る場合は、「追越し」にはなりません。
ちなみに「追越し」は、それぞれの車両等が走行していることを前提としていますので、前の車が渋滞などで停止中の場合は含まれません。
とすれば、先ほどのすり抜けのパターン1.「赤信号や渋滞などで停止中の車列をすり抜ける」は追越しにあたらないことになります。
パターン2.「ノロノロ運転中の車列をすり抜ける」と3.「普通に流れている車列をすり抜ける」は、それぞれの車は動いていますので追越し行為の問題になります。
追越しの場合の注意点
追越しの方法については法律(道路交通法28条1~2項)で定められています。
- 追越す車の右側を通行すること
- 右折待ちの車を追越す場合はその車の左側を通行すること
その他、車間距離を保つことや、進路変更禁止場所、追越し禁止場所(曲がり角付近、坂の頂上付近、トンネル、交差点・踏切・横断歩道の直前30m以内)での追い越し禁止などといったことにも注意する必要があります。
割り込み
車両の割り込みは法律上禁止されています。
車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追いついたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切つてはならない。
出典:道路交通法32条
この法律で禁止されているのは、
- 法令
- 警察官の命令
- 危険防止
を理由に停止(又は停止しようと徐行)している車や、それらの後続車に追いついたときに、前に割り込んだり、前を横切ったりすることです。
「割り込み」とは、停止(又は停止しようと徐行)している車の横を通過して車両等の間に無理に進入することです。
「前方を横切る」とは、停止(又は停止しようと徐行)している車の横を通過して、その車両の直前で右折または左折することです。
もっとも、無理なく楽に進入できる間隔があるときは、進入してもこの規定には反しないと考えられています(道路交通執務研究会編著『17訂版 執務資料道路交通法解説』東京法令出版、290頁参照)。
違反になるのは、例えば、赤信号や一時停止義務など(同書、287~288頁参照)法令を理由として停止(又は停止しようと徐行)している車や、警察官の命令や危険防止のために停止(又は停止しようと徐行)している車の前に無理に割り込んだり、前を横切ったりする場合です。
信号無視!?
現実に信号無視と判断される可能性は低いかもしれませんが、法律論として考えた場合という程度にご理解ください。
すり抜けで信号無視?と思われるかもしれませんが、赤信号で止まっている車列をすり抜けて前方に出ようとして停止線を超えてしまうと、信号無視になってしまう可能性もゼロではありません。
なぜなら、赤信号は「停止位置を越えて進行してはならない」ことを意味し、「停止線が設けられているとき」の停止位置は「停止線の直前」(道路交通法施行令2条1項備考欄)で、信号無視の違反は「停止位置」を基準に判断される(前掲書、111頁参照)ことが要件の一つとなっているからです。
赤信号による渋滞などの場合は、上の項目の「割り込み」の規定も絡んできます。
路肩と路側帯
バイクがすり抜けをする際には、道路の左端を走ることが多いと思います。
そこは走行していいのでしょうか。
これは路肩であるか、路側帯であるかによって違いがあります。
路肩は、
道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために、車道、歩道、自転車道又は自転車歩行者道に接続して設けられる帯状の道路の部分をいう。
出典:道路構造令2条12号、車両制限令2条7号
と規定されています。
路肩は区画線によってペイントされていない道路で、端から0.50mの部分のことをいいます。
この部分は自動車は走ることはできませんが、バイクについては規制がありません。
路側帯は、
歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう。
出典:道路交通法2条1項3号の4
と規定されています。
路側帯は、歩道のない道路(又は歩道のない側)で道路の端が区画線で分けられている部分です。こちらは歩道と同様、車もバイクも走ることはできません。
どんなすり抜けなら大丈夫?
以上、バイクがすり抜けをする際に問題になりそうな点をまとめました。
細かく見ていくと、とてつもなく複雑で膨大な文字数が必要になるため、あくまでざっくりとした説明にとどめました。
結局、どういったすり抜けなら大丈夫なのかというと、すり抜けについての明確な規定がない以上、上で説明したような法令に抵触しない走り方なら大丈夫という言い方をするしかないと考えています。
イマイチはっきりしないとの印象をお持ちの方もおられるかもしれませんが、法律に規定がないため仕方がないと思います。
いずれにしろ、交通ルールを守って安全運転を心がけましょう。
路側帯の説明に使用されている画像ですが、左手側に歩道の存在が確認できますので「路側帯」ではなく「車道外側線」であると推察されます。
車道外側線はあくまで安全な走行のための目安となる区画線ですので自動車も二輪車も走行が可能です。
「法律」というカテゴリーで法令などを具体的に引用されているのであれば、読者に対し誤解のないようより正確な情報を掲載していただきますようよろしくお願いいたします。
ご指摘いただき、誠にありがとうございました。
該当部分の画像につきましては差し替えさせていただきました。
見直しの機会を与えていただき、感謝申し上げます。