さまざまな事情により、苗字(名字)を変えたいという方は、世の中にはたくさんおられます。

ですが苗字を変えることは、名(下の名前)を変えることよりも難しいことであるとされています。苗字を変える手続きをすると、原則として同じ戸籍内の人全員の苗字が変更されることになります。

ですので、複数の人に影響が起きる可能性があるということで、名の変更よりも慎重さが求められます。

そのような状況にある苗字の変更ですが、結婚や離婚などの事情がない場合に「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)によって苗字が変更できるのはどのような場合なのかについて紹介したいと思います。

 

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なお、結婚や離婚、養子縁組など身分関係に変動があって法律上苗字が変更になる場合や、その他一定の条件を満たす場合に苗字を変更できる場合などの一覧については、以下の記事にまとめています。

ご興味のある方は合わせてお読みいただけると幸いです。

苗字(名字)が変更になる場合・変更できる場合一覧

 

また、名の変更については以下の記事を参考にしてください。

名前を変える方法は?変更できた具体例とともに紹介!

 

苗字(名字)を変える方法

一般的に苗字(名字)といわれているものは、法律用語では「氏(し)」といいますので、以下「苗字(名字)」のことを「氏」と表現します。

具体的な手続き

氏を変更するためには

  • 氏の変更許可の申立書
  • 収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 申立人の戸籍謄本
  • 氏の変更の理由を証明する資料
  • 同一戸籍内の15歳以上の者の同意書

 

が必要となります。

書式のダウンロードやどこの家庭裁判所に申し立てるべきかなどの具体的な手続きについては、裁判所のサイトに書かれていますのでご参照ください。

認められるための要件

具体的な手続きをとる前に手続きの流れと、どんな場合に認められたのか、あるいは認められなかったのか、過去の例をもとにおおよその感覚をつかんでおくとよいでしょう。

氏を変更するには、以下の点を満たす必要があります。

  1. やむを得ない事由
  2. 家庭裁判所の許可
  3. 届け出

 

氏を変更するための1.やむを得ない事由があると考える人は、戸籍の筆頭に記載されている人とその配偶者とともに申し立てをして2.家庭裁判所の許可をもらう必要があります。

許可が出れば、市町村役場に3.届け出をすれば、氏の変更がされます。

順番にくわしく見ていきます。

苗字を変える方法1

1.やむを得ない事由

裁判所のサイトによると、やむを得ない事由とは、

氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうとされています。

出展:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_19/index.html

と書かれています。

その判断にあたっては、それぞれの個別事情が考慮されます。

 

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2.家庭裁判所の許可

家庭裁判所の許可をもらうためには、氏の変更のための申立書を作成し、戸籍の筆頭に記載されている人その配偶者とともに申し立てをする必要があります。

申立書は、家事審判申立書というものに、申し立ての趣旨と申し立ての理由を記載することになります。

それをもとに「やむを得ない事由」があるかどうかが判断されます。

では許可された事例、許可されなかった事例を見てみます。

許可された事例

こちらは「やむを得ない事由」があると判断された事例です。

  • 「猿田」という氏は珍奇ではないが、一般人に動物を連想させるなど本人や子の人格形成に悪影響を及ぼすため「藤本」に変更
  • 15年間養親子で離縁後、離縁前の氏を継続使用し、子女の養育にも当たっている場合に離縁前の氏に変更
  • 20年間内縁の夫の姓を通称し、内縁の夫の死亡後母子で氏が異なっては困る場合、内縁の夫の氏に変更
  • 元暴力団員が更正のために必要な場合

 

許可されなかった事例

こちらは「やむを得ない事由」がないと判断された事例です。

  • 「三角」という姓は、珍奇または侮蔑の意味はない
  • 「簾」という姓は、やや難解、難読で道具の名であるが、人に嫌悪の感を起こさせない
  • 12年間一緒に生活をした内縁の妻が、内縁の亡夫の氏への変更は「やむをえない事由」に該当しない

 

以上が過去の裁判例ですが、それぞれ具体的な事情が考慮されますので、はっきりとした基準があるわけではありません。

ですから、どのような点で「やむを得ない事情」(社会生活において著しい支障)があるのかをご自身の状況において具体的に示す必要があります。

3.届け出

家庭裁判所の許可が出れば、戸籍の筆頭に記載されている人とその配偶者の双方が届出をする必要があります。

この届出が受理されることによってはじめて氏が変更されたことになります。

もし、同じ戸籍の中の一部の人だけ苗字を変えたいというのであれば、戸籍を別にする分籍などを行う必要があります。

さいごに

冒頭でも書きましたが、苗字つまり氏を変更することは名を変更するよりも、変更するに足る事情があるかどうかを厳しく判断されます。

苗字の変更は、同じ戸籍の人全員の氏も変わることになり、その人たちにも影響が及びますので名の変更よりも慎重な姿勢が求めらます。

最初の方で紹介したように、具体的な手続きに必要なことは裁判所のサイトに記載されています。

申立書の記載などがわかりにくい場合は、申し立ての前に家庭裁判所に問い合わせるか、司法書士や弁護士などの専門家に相談されてみてください。

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苗字(名字)が変更になる場合・変更できる場合一覧

名前を変える方法は?変更できた具体例とともに紹介!

 

 

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