戸籍(こせき)は日本国民であれば誰もが関係のある制度です。
しかし、そうであるにもかかわらず、普段の生活ではあまりなじみがないので漠然としたイメージしかないという方も多いのではないでしょうか。
しかも国籍や本籍、住民票などとの違いもイマイチあいまいでわかりにくいと感じておられる方も多いかもしれません。
そこでこの記事では、戸籍についての説明を軸にして、これらの用語や制度などの違いについて一挙に説明していこうと思います。
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戸籍ってなに?
戸籍とは、日本国民の身分関係(親族関係)を登録(証明)する制度のことです。
戸籍は日本国民でなければ登録することができず、建前上は日本国民全員が登録されることになっています。
逆に言うと、戸籍に登録されている人は日本国民であるということになります。
戸籍は、正本と副本が作成され、前者は市町村役場、後者は管轄法務局が保存しています。
戸籍制度は世界各国に同じような制度があると思いがちですが、実は日本独特の制度なんです。
日本の戸籍制度ができたのは明治5年のことです。
日本には「家」という制度があり家には戸主を筆頭者としてその家族を記載したものが戸籍の始まりでした。
何のためにあるの?
戸籍は何のためにあるのかというと、主に記載されている人が日本に存在しているということを証明するためにあります。
実際の使われ方としては、
- 本人確認
- 親族関係の確認
- 裁判で年齢や相続関係などの証明
- 家庭裁判所の訴訟や調停、審判手続きなどの登記手続
といったものがあります。
身近な例では、パスポートの発給申請や年金の需給、本籍地以外で婚姻届を出す場合などに使用されますね。
実際の書類は?
この戸籍を証明するための書類が戸籍謄本(こせきとうほん)または戸籍抄本(こせきしょうほん)です。
お役所も電子化が進み、電子化後は戸籍謄本は「戸籍全部事項証明書」、戸籍抄本は「戸籍一部事項証明書」といった呼び方がされています。
内容は以下のとおりです。
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)・・・戸籍の全部の写し
- 戸籍抄本(戸籍一部事項証明書)・・・戸籍の一部の写し
戸籍に載っていること
戸籍には何が記載されているかというと、以下の項目が記載されています。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入つた原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六 夫婦については、夫又は妻である旨
七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
八 その他法務省令で定める事
出典:戸籍法13条
少し細かいですが、一番下の「八 その他法務省令で定める事」とは、以下のものになります。
一 戸籍法第十三条第一号 から第七号 までに掲げる事項のほか、身分に関する事項
二 届出又は申請の受附の年月日並びに事件の本人でない者が届出又は申請をした場合には、届出人又は申請人の資格及び氏名(父又は母が届出人又は申請人であるときは、氏名を除く。)
三 報告の受附の年月日及び報告者の職名
四 請求、嘱託又は証書若しくは航海日誌の謄本の受附の年月日
五 他の市町村長又は官庁からその受理した届書、申請書その他の書類の送付を受けた場合には、その受附の年月日及びその書類を受理した者の職名
六 戸籍の記載を命ずる裁判確定の年月日
出典:戸籍法施行規則30条
戸籍の作り方
戸籍は通常、生まれたときに親の戸籍に入れられます。
そして、結婚を機に親の戸籍を出て、夫婦の戸籍を作ります。
手続きとしては、当事者が市町村役場に届け出ることによって作られます。
以上が戸籍についての大まかな説明でした。
次からは、戸籍制度に関連する周辺の用語などと戸籍との違いについてみていきます。
本籍(本籍地)との違い
本籍(ほんせき)とは、戸籍がある場所のことをいいます。本籍地(ほんせきち)ともいいます。
本籍は戸籍を作成する基準となるもので、戸籍の作成は本籍のある市町村役場で行われます。す。
通常出生によって親の戸籍に入っていますから、結婚などで親の戸籍を出るまでは親の本籍と同じであることがほとんどです。
本籍は現実の居住地、出身地などとは関係なく、夫婦が婚姻に際して自由に定め、変更することができます。
国籍との違い
国籍(こくせき)とは、国家の構成員としての資格のことをいいます。
ですから、どこかの国の国民というためには、その国の国籍を取得することが必要になります。
日本国籍の場合は国籍法によって取得要件などが定められています。
先ほど説明した日本の戸籍制度についてのはじめのほうで少し触れましたが、日本の戸籍は日本国民でなければ登録できないことになっています。
すなわち、戸籍に記載されている人は全員日本国籍を有する人ということになります。
ちなみに、日本に住む外国人(中長期滞在者や特別永住者等)の場合は、在留カードや特別永住者証明書などで身分証明ができます。
外国人の方が戸籍に記載されるためには、日本国籍を取得する必要があります。
住民票との違い
住民票は、市町村または特別区で住民基本台帳に編成される住民に関する記録のことです。
先ほど国籍のところで触れた外国籍の中長期滞在者や特別永住者などでも、住民基本台帳に記録して住民票を発行してもらうことができます。
住民票に記載されている主な内容は以下です。
- 氏名
- 出生年月日
- 性別
- 世帯主や世帯主との続柄
- 戸籍の表示
- 住民となつた年月日
- 選挙人名簿登録の有無
- 国民健康保険、介護保険、国民年、児童手当などに関する事項
- 住民票コード
さいごに
以上、戸籍制度とそれに関連する本籍や国籍、住民票などについての説明でした。
日本国民はもちろん、日本に居住している外国籍の方にとっても無縁ではいられないこれらの制度について、大まかに理解しておけば、いざというときに混乱しなくてすむと思いますので、一度確認しておかれて損はないはずです。
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確かに戸籍があれば日本人、その逆に日本人であれば必ず戸籍があると理解できるのですが、国籍法11条に該当者が何らの手続きをしなければ国籍は自動的に消滅していても、戸籍が残ってしまうという不合理性が生じるのですが、法務省はそのような該当者の戸籍消滅に関しては極めて消極なのです。ですから、ベルの大統領だったフジモリ氏が戸籍が存在していたので日本で旅券が交付されたり、参議院選挙に立候補できたりしているのですが、誰もそのことに疑義を呈していないのです。