よくニュースなどで「タレントの○○が書類送検されました」って報道されますよね。

その書類送検ってよく聞きますが、一体何なのでしょうか。

どういうことを意味するのか、わかりやすく解説したいと思います。

書類送検とは?

ズバリ結論をいいますと、警察が検察に事件に関係する書類を送ることをいいます。

書類送検はマスコミ用語で、法律用語では「送致(そうち)」とか「検察官送致(けんさつかんそうち)」といいます。

書類が検察に送られる、というだけでは意味がわかりにくいと思いますので、刑事事件が処理される手続きの流れを紹介します。

Sponsored Links

刑事事件はこうして処理される!

警察の捜査からはじまる事件の流れは大まかに以下のようになります

  1. 警察が被疑者を特定
  2. 被疑者への事情聴取・取調べ(逮捕の場合もあり)
  3. 事件の書類を検察官へ送致(逮捕されている場合は身柄も)
  4. 検察官が捜査して起訴(きそ)するか判断
  5. 起訴(裁判所へ訴えること)
  6. 裁判所で審理
  7. 判決(不服なら上訴)
  8. 判決確定
  9. 刑の執行

書類送検の意味と逮捕起訴との関係

事件が発覚してから被疑者が刑罰を受けるまでに、こういった手続きを経なければならないことになっています。

これだけ複雑なのは、間違って処罰してしまうと大変な人権侵害になってしまいますので、何重ものチェック体制をしいて間違いを防ぐためなのですね。

1.2.被疑者とは、犯罪を犯した疑いをもたれている人物のことで、容疑者とほぼ同じ意味です。これらの用語の意味については以下の記事に詳しく書いています。
容疑者と被告、被疑者と被告人の違いは?マスコミ用語を解説

警察から検察へ送ること

書類送検といっているのは、3.の段階のことです。

法律上は警察は事件を全て検察官へ送致しなければならないことになっています。

「書類送検されました」と報道されたということは、事件が次は検察官が関わる段階まで手続きが進んだということを意味します。

どんな書類を送るの?

書類送検の「書類」は、捜査に関係する書類や証拠物のことで、具体的には以下のようなものです。

  • 供述調書
  • 現場検証の書類
  • 被害届
  • 証拠物

書類だけではなく、犯行に使われた道具などの証拠物も含まれるのですね。

書類送検は逮捕されていないことが前提

一般に書類送検というのは身体が拘束されていない状態で、書類だけが検察官に送られる場合のことをいいます。

ちなみに2.の段階で逮捕される場合もありますが、逮捕されると、身柄が拘束された状態になっていますので、身柄と一緒に事件の書類も検察官へ送致されます。

逮捕されるのは、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合などが多いです。

Sponsored Links

書類送検と書類送付の違いは?

書類送検と似た言葉で「書類送付」という言葉が使われることがあります。

意味としてはどちらも同じ検察官へ送るということになります。

しかし、報道では「捜査書類送付」あるいは「検察庁へ書類を送付」と表現されることがあります。

これにはどういった理由があるのでしょうか。大きく以下の二つの理由が言われています。

  1. 告訴・告発を受けた事件の場合だから
  2. イメージが悪くならないように配慮したから

 

まず1.について。事件には、捜査機関が独自に事件をキャッチして捜査を開始するものと、被害者などから告訴(こくそ)・告発(こくはつ)を受けて捜査を開始するものがあります。告訴・告発の意味や違いについては以下の記事に詳しく書いています。
告訴と告発の違いをわかりやすく説明します

この告訴・告発を受けて捜査を開始した事件については、法律の条文上「送致」ではなく「送付」という文言が使われています。

ですので、報道もそれにあわせて告訴・告発から始まった事件については「書類送付」という言葉を使ったのだという理由が考えられます。

しかし、告訴・告発から始まった事件であっても「書類送検」と報道されたものはたくさんありますので、それとの整合性ははっきりしません。

次に2.は、有名なタレントや法人の幹部などの事件ということで、その人物になるべく悪いイメージがつかないように配慮して、「送検」ではなく「送付」と表現したのだという見方です。

確かに、告訴・告発から始まった事件でも「書類送検」と報道されているものが多くあるということになると、そういう見方もできなくはありませんね。

記者の言葉選びが気まぐれであったということも考えられるかもしれませんが、世間が注目する有名人物の事件で度々「送付」が使われることを考えると、しっくりこない気がします。

真相ははっきりしませんが、世間では配慮したのではないかとの印象をもつ人は多いようですね。

前科はつくの?

書類送検をされただけでは前科はつきません

先ほど説明した刑事事件の処理の流れで、少なくとも8.有罪判決が確定しなければ前科がつきません。

それまでは被疑者は無罪であることが推定されます(無罪推定の原則)。

書類送検の段階では、事件処理の手続きがまだ途中だということですね。

書類送検された後は、検察官が事件の内容を精査して起訴(裁判に訴えること)するかどうか判断します。

例えば人違いであったとか、証拠が不十分である、あるいは罪が軽く反省しているので起訴するほどでもない等と検察官が判断した場合は不起訴となり、刑事手続はそこで終わりになります。不起訴になれば前科はつかず、ペナルティが課されることもありません。書類送検の事実が記録として残るだけになります。

さいごに

書類送検と聞くと、罪が確定したかのような印象があるかもしれませんが、実は刑事手続きでは警察から検察へ事件が送られたという途中の段階だということがお分かりいただけたかと思います。

法律上、警察は事件を全て検察へ送らなければいけないという建前になっていますので、犯人である可能性が高まったからとか、特別な事件だから書類送検されたというわけではないのです。

警察から検察へ事件が移ると、次は検察が起訴するかどうかを判断し、起訴されると裁判になります。

ですから書類送検の次は、検察が起訴する(裁判に訴える)かどうかということに注意しておけば事件の展開が見えやすくなりますので、参考にしてみてくださいね。

Sponsored Links