民法が改正されるとニュースなどで話題になることが多くなりました。

明治時代(1896年)に制定された法律である民法が120年ぶりに大きく変わるといわれています。

2017年(平成29年)5月26日、民法改正案(民法の一部を改正する法律案)が参議院で可決、成立したことで、いよいよ民法改正が現実のものとなりました。

民法が改正されることで、私たち一般市民にどんな影響があるのでしょうか。

これまでの法律が大きく変わるということは、私たちにもなにかしら影響があると予想できます。

「民法」という名前は法律問題を扱ったテレビ番組ではよく耳にしますが、それが一体何なのかは漠然としていてイメージしづらいかもしれません。

ということで、民法改正の中身を紹介する前に、まずは民法とは何なのかについてみてみましょう。

 

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そもそも民法とは?

民法とは一言でいうと、市民社会のルールを定めた法律です。

市民社会といってもいろんな場面があります。

家庭生活、仕事、遊び、日常のトラブル・・・などなど

民法はそういったさまざまな場面のルールについて定めています。

ですから、日常生活で起こる紛争やトラブルを題材にした番組で登場することが多いのですね。

市民社会のルールを定めたのが民法

さまざまな場面・・・ということは、当然ながら膨大な数のルールを定めていて、民法には1000条を超える条文が規定されています。

民法の内容を大きく分けると次の二つ分けられます。

  1. 財産関係に関するもの
  2. 家族関係に関するもの

 

1.は物権債権契約不法行為などについての規定で、2.は親族相続に関する規定です。

民法改正いつから何が変わる?

今回の改正は債権法が中心

今回大きく改正されるのは、1.の中の債権に関する部分です。

ですので専門家の間では債権法改正などといわれています。

債権というのは、ある人が他の人に対して特定のことを要求できる権利をいいます。

例えば、買い物をしたときに買主は売主に商品を引き渡してもらう権利がありますし、売主は買主に代金を支払ってもらう権利がありますが、このような人に対して要求できる権利のことを債権というのですね。

ちなみに物権というのは、物や不動産などに対する直接的な権利のことをいいます。例えば、所有権とか抵当権のことですね。

今回は債権関係の改正が多いということで、企業や個人が行うビジネスや経済活動にも影響がでてきそうです。

民法改正で何が変わるの?

今回の改正は、大改正とか抜本的改正などといわれるように、改正される点がたくさんあって約200項目ほどあります。

ここで全ては紹介することはできませんが、一般の人やビジネスパーソンにとって比較的影響があると思われる点に絞って紹介します。

民法改正の重要ポイントはコレ!

  1. 飲み屋のツケの時効消滅が1年から5年に(短期消滅時効の廃止
  2. 法定利率は年5%から3%に(法定利率の引き下げと変動利率の導入
  3. 事業の融資に個人保証は原則無効(保証人保護の強化
  4. 敷金は原則返さなければならない(敷金関係の判例法理を明文化
  5. 欠陥商品には修理や代金減額も請求できる(瑕疵担保責任は契約責任説を採用
  6. 約款をきちんと読まないと大変なことに!?(定型約款の新設

 

これらについて順番に説明していきましょう。

1.飲み屋のツケの時効消滅が1年から5年に(短期消滅時効の廃止)

ご存知の方も多いかもしれませんが、現行民法では飲み屋さんのツケは、1年時効消滅することになっています。

他には、小売商のツケや学習塾の授業料、弁護士報酬債権は2年、医師・助産師の診療報酬債権は3年で時効消滅します。

しかし、こういった区別をすることの合理性が疑われてきたため、改正案ではこれらの区別は廃止されます。

廃止されると、これらの債権は他の債権と同様、多くは5年または10年で時効消滅することになります。

ですから、1年間催促がなかったからといって飲み屋のツケが消えては無くならないことになります。

2.法定利率は年5%から3%に(法定利率の引き下げと変動利率の導入)

お金の貸し借りをする場合、法律の範囲内であれば利率を当事者間で決めることができます。これを約定利率といいます。ですから、消費者金融やローンなどの利率は会社によって違うわけですね。

これに対して、法定利率というのは、当事者間であらかじめ合意できない利率のことをいいます。例えば、契約相手が約束を守らないことで損害が出た場合の損害賠償請求権の利率です。

改正案ではこの法定利率が5%から3%になります。これは裁判が長引けば長引くほど損害を被った側が有利になるということを防ぐ意味もあります。

この法定利率3%というのは、3年を1期として変更され変動する可能性があります。理由は市場金利との乖離を少なくするためです。

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3.事業の融資に個人保証は原則無効(保証人保護の強化)

知り合いの保証人になったばっかりに莫大な借金を背負わされ一家が破滅した、などという話は誰もが耳にしたことがあると思います。

このような悲劇を少しでも減らすため、企業への融資の場面で個人が保証人になることは原則的に否定されます。事業資金の借り入れについて個人が保証人になるということは、予期しない負担を強いられ過大な負担が生じる危険があります。

そういった危険を避けるため、公証人によって保証意思の確認の上、公正証書を作ってもらうなどのことが無い限り、個人が保証人になることはできなくなります。

4.敷金は原則返さなければならない(敷金関係の判例法理を明文化)

マンションやアパートを借りる際に払う敷金ですが、これまで不明瞭な点も多くトラブルにもなってきました。

そこで、改正案では過去の裁判例をもとに敷金についての規定が新たに追加されます。

内容としては、賃貸借契約が終了して部屋を出て行った場合、貸主は敷金を借主に返還しなければならないというものです。

ただ、借主が払っていない金銭債務がある場合は貸主は敷金からその額を差し引くことができるという規定も追加されます。

敷金関係については以下の記事により詳しく書いています。
敷金は返金されて当然?礼金は?民法改正で変わること

5.欠陥商品には修理や代金減額も請求できる(瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)は契約責任説を採用)

購入した商品に欠陥があった場合、取り替えてもらったり、修理してもらうことは当然だと思いますよね。

しかし、現行民法上はこういったケースについては契約の解除損害賠償請求についてしか規定がありませんでした。

それは不都合ということで改正案では明文で規定されることになりました。

契約の当事者間で契約の趣旨にあった品質を満たしていなければ、売主は契約上の責任を負い、買主は契約の解除損害賠償請求に加え、修理代金減額も請求できることになります。

ちなみに商品などに欠陥があることを「瑕疵(かし)」表現されていましたが、改正法では瑕疵という言葉はなくなり「不適合(ふてきごう)」と表現されることになったことも大きな特徴です。

6.約款はきちんと確認すべき?(定型約款の新設)

インターネットでショッピングをしたときや、保険を契約した際などに出てくる約款(やっかん)。

おそらくほとんどの方は読まれていないと思います。

実は現行民法では約款についての規定がありませんでした。当事者の意思を尊重するという観点から、約款に書いてあるからといって必ずしも当事者がそれに拘束されるわけではありませんでした。

しかし、改正法では定型的な取引など一定の場合には約款も契約の内容として効力をもつようになります。

もっとも、どんな内容の約款でも有効かというとそうではなく、相手の権利を制限したり義務を加重する規定の場合、社会通念上の信義に反し相手の利益を一方的に害するものは効力はありません。ですから、どんな内容でも書いてあればOKというわけではありません。

しかし、そうでない場合は原則として契約の内容になりますので、これまで以上に約款に目を通しておくに越したことはありません。

約款については以下の関連記事を書いていますので、よろしければ参考にしてください。

約款と契約書の違いは?民法改正で気をつけるべきこと

いつから変わるの?

では、民法はいつから改正されるのでしょうか。

法律が改正されるには、

  1. 法律案の作成・審査
  2. 国会へ提出
  3. 国会で審議・可決
  4. 法律の公布・施行

という過程が必要になります。

法律改正の手続きや改正法が効力を生じる時期などについては以下の記事に詳しく書いています。
民法改正はいつから有効?敷金はどうなる?

民法改正案は2015年3月31日、国会へ提出されました。報道によると、今年度(2015年度)中に成立し、2018年をメドに施行される見通しといわれていました。

しかし、安保関連法案の審議などが優先され、第189回国会での成立は見送られましたが、2017年(平成29年)5月26日、参議院で可決、成立しました

2020年をめどに施行される予定とされています。

民法が改正されると、私たち国民は嫌でもそれに対応していかなければいけないません。

ですので、あらかじめ内容を知り準備しておいて損はありません。

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