労働者派遣法改正案はこれまで2回廃案になっていましたが、国会で可決、成立し、2015年9月30日に施行されました。
これまでこの法案に反対する声が多かったということは事実です。しかし、どのような点が批判の対象になっているのかイマイチわかりにくいところがありました。
今回の法律改正で、どういった影響が考えられるでしょうか。派遣社員だけでなく正社員で働いている人にも影響が出るとの見方もあります。
ということで、改正案のポイントと賛成派・反対派の代表的な意見をまとめてみました。
2015年(平成27年)労働者派遣法改正案のポイント
労働者派遣法改正案といっても、内容的にはいろいろとあります。
例えば以下のような内容についてのものがあります。
- 全ての労働者派遣事業の許可制
- 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等
- 労働者派遣の役務の提供を受ける期間
- 労働契約申込みみなし制度
ポイントは?
それ以外にも細かな内容のものはありますが、今回の改正案の中で大きな問題になっているのは、3つ目の派遣労働者の「期間」についてです。
現行の法律では、専門26業務(通訳や秘書、ソフト開発、機械設計など)と呼ばれる業務についての派遣社員は、同じ派遣先で期間の制限がなく働くことができました。
これに対し、専門26業務以外の業務に就く派遣社員は、同じ派遣先で働くことができるのは最長3年でした。
改正案では、 専門26業務とそれ以外という区別を撤廃し、全ての業務において同一派遣先で働くことができるのは最長3年にするとの内容になっています。
加えて現行法では、例えばA派遣会社から派遣されたBさんが派遣先で最長3年働けば、その派遣先ではその後Bさんはもちろん、A派遣会社のほかの派遣社員Cさんも、その派遣先で働くことができませんでしたが、改正案ではCさんは働くことができるようになります(派遣可能期間の延長)。
このように改正されることが大きな問題になっています。
何が問題なの?
以上のように改正されることの何が問題なのでしょうか。
改正案の賛成派・反対派それぞれの理由は主に以下のとおりです。
【賛成派】
- 業務区分の境界が法律や政令だけではわかりにくかったが、専門26業務の区分撤廃によってわかりやすくなる。
- 労働者の選択肢が増え、より多様な働き方ができるし、雇用確保にもつながる。
- 社会保険などの加入のチェックやキャリアアップの支援なども義務化されるため、派遣社員の待遇改善になる。
【反対派】
- 派遣先は3年ごとに派遣社員を交代させれば、どんな業務でもずっと派遣社員を使うことができるようになる。これでは正社員を派遣社員への切り替えが進んで雇用が不安定化する。
- 最長で3年しかいない派遣社員にはスキルアップなどの機会が与えられることは期待できない。正社員の派遣社員化が進むと、そのようなスキルアップができないまま年齢を重ねる者が増える。
実際はどうなの?
では、実際のところはどうなのでしょうか。
そもそも、派遣労働者の働き方は、あくまで例外的な働き方という位置づけでした。
つまり、企業が一時的に人材不足になった場合に、派遣労働者に急場しのぎ的に働いてもらうというもので、永続的に働くということは想定されておらず、業務内容にも期間にも制限がありました。
しかし、今回の改正案では実質的に業務内容も期間制限も緩められ、原則と例外が逆転することになるのではとの懸念がなされています。
改正案では、専門26業務の区分撤廃だけでなく、全ての労働者派遣事業が許可制になることや、派遣会社の労働者に対するキャリアアップ支援や、雇用継続のための措置を義務付けるなどの点も含まれ、労働者に対するデメリットばかりではないとも思われます。
この制度をきっかけにして、これまで正社員になれなかった派遣社員が正社員への道が開かれる可能性もあります。正しい運用がなされれば派遣労働者に有利な制度のように思えます。
もっとも、反対の声も根強かった法案で過去に同様の法案が廃案になった経緯もあるため、実際の運用を慎重に見守る必要がありそうです。
追記:国会で可決、成立し、2015年9月30日に施行されました。