土地の相続登記が義務化されるかもしれないという報道が最近なされるようになりました。所有者不明の土地が増えていることにかんがみ、国が法律改正に動き始めているからです。
この記事では相続登記を経験した筆者が、これから相続登記を行う方があらかじめ知っておいたほうが良いと思ったことなどについて書いていきます。
このブログでは少し前に、土地の境界トラブルについての記事を書きました。
土地の境界線トラブル|半世紀以上続いた境界紛争を話し合いで解決するために気を付けたこと
この件では、お隣の土地との境界をはっきりさせると同時に相続登記も行いました。
相続登記がどんなもので、どういった書類が必要なのかが事前にわかっているとイメージがわき、よりスムーズに相続登記が行えるのではないか思いましたので、それらについて書きたいと思います。
土地の相続登記とは
一般的に不動産は、所在する場所、面積、所有者の住所・氏名などが国が管理する帳簿(登記簿)に記載されて一般公開されています。これが不動産登記といわれるもので、土地の登記も含まれます。
土地の相続登記とは、土地の所有者として記載されている人が亡くなった場合に、名義人を相続した人(たち)に変更することです。
相続は、被相続人(相続される人)が死亡することによって開始されます。
現状では、土地に相続が発生しても、その土地についての相続登記をしなければならないという義務はありません。そのため、相続登記がなされないまま放置されることがあります。
筆者の実家の土地も相続発生からすぐに相続登記が行われたわけではなく、放置されていた期間がありました。
知っておきたいこと
相続登記をするにあたって知っておきたいことは、大きく以下の2つのことです。
- 相続登記しないデメリットとリスク
- 相続登記の手続きについて
相続登記を自分でするにしろ、司法書士に依頼するにしろ、これらについてある程度知っておいたほうが、スムーズに手続きを進めることができると思われますので参考にしていただけると幸いです。
相続登記しないデメリットとリスク
相続登記をしない場合のデメリットとリスクは主に以下のものがあげられます。
- 売却できない
- 土地を担保にお金を借りれない
- 相続人が増えて権利関係が複雑になるおそれがある
相続登記がされないと、土地を売ることはできません。売却には土地の所有者全員の合意と実態に合った登記が必要になるからです。分筆手続きをして土地の一部分を売る場合も同様です。
また、融資を受けるために、抵当権を設定するなどして土地を担保にしようとしても、登記が相続人の名義になっていなければできません。
このように、相続登記がなされていなければ土地の処分に制限がでてくることがあります。
また、相続登記しないまま長年経過し、相続人にも亡くなる方が出てきたりすると、さらに相続人が増えたりして、権利関係が複雑になってくるおそれがあります。そうなると相続登記に必要な書類を集めるのも大変になります。
全員の相続人の所在が把握できなくなったりすることで、結果的に所有者不明の土地になったりすることにもなります。
相続登記の手続きについて
相続登記に必要な書類は、相続の仕方によって少し変わってきます。
相続の仕方3通り
財産の相続の仕方は以下の3通りがあります。
- 遺言による相続
- 遺産分割による相続
- 法定相続
ざっくり言うと、以下の流れで相続の仕方が決まります。
まず遺言書があるかどうかをチェックし、有効なものがある場合はそれに従います。無い場合は相続人間で遺産分割の協議をして分けるのか、法律の規定通りに分けるのかを決めていきます。
いずれの場合でも共通して必要な書類は以下です。
- 登記申請書
- 土地の登記事項証明書
- 被相続人の住民票の写しまたは戸籍附票の写し
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票の写し
- 土地の固定資産評価証明書
- 登録免許税の収入印紙
これ以外に必要になってくる書類は相続の仕方によって異なってきます。例えば遺言書や遺産分割協議書、印鑑証明書、戸籍関係書類などです。
申請手続き
必要な書類が準備できたら、法務局へ登記申請を行います。
申請方法としては、以下の3つがあります。
- 窓口へ持参する
- 郵送する
- オンラインで申請する
自分でできる?
相続登記は、その気になれば自分(相続人自身)で行うことは可能です。事実、筆者の父は全くの素人ですが、これまでに相続登記を自分で行ったことがあります。
もっとも、相続登記はそれなりに手間と時間がかかりますので、専門家である司法書士に依頼したほうが無難ともいえます。依頼した場合はその分費用がかかりますので、そのバランスを考えてご判断ください。
もし、ご自分で相続登記を行われる場合は、以下の書籍などを参考にされるとよいでしょう。
おわりに
本来相続登記は、相続が開始されれば速やかに行うのが理想です。
実態に合致していないままの登記を放置しておくと、トラブルや混乱が生じるなど、さまざまなデメリットやリスクがあります。この状況は相続登記が法律で義務化される・されないに関係ありません。
相続登記の義務化がなされていない段階であっても、この議論をきっかけに相続登記について今一度考えていただければ幸いです。