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土地の境界線トラブルを経験して気づいたこと|解決後の雑感

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以前の記事では、土地の境界線トラブルを話し合いで解決するために気を付けたことなどについて書きました。

今回の記事では、こういった経験をしたことで気が付いたことや、個人的に考えたことなどがありましたので、雑感のようかかたちで記してみたいと思います。

実際に自分が当事者になる前と後では、境界トラブルについての見方が少し変わりました。当初は、元の境界線が発見できれば解決するものと思っていましたが、そう単純に解決できないこともあるということがわかりました。

トラブルの原因や解決法は、トラブルの数だけあるといってもいいくらい様々ですが、当事者の感情的な問題も複雑に絡み合っていることも多いのではないでしょうか。

トラブルに至るまでの経緯や背景事情などから、当事者の感情の問題を読み解いていくことがトラブル解決のためのヒントになると感じることもありました。

根本にある感情的な問題

土地の境界トラブルは、感情的な問題が大きなウエイトを占めていることがあります。

本来土地の境界は公共的な意味合いもあり、当事者同士の話し合いで決めるというものではなく、概念上はすでに決まっているものです。

しかし実際の現場に行ってみて不明確な場合は、当事者同士の話し合いによって決めるということが現実的な運用としてなされています。その際に感情的な問題が生じてきます。

少しでも自分側の土地が広くなるようにしたいという気持ちだけでなく、境界で揉めることになった背景やその他の事情なども複雑に絡んでくることもあります。

それは元の境界が不明確である場合はもちろん、明確な場合にでも影響を及ぼしてくる可能性もあります。

境界が不明確であるとき

本当の境界がわからず、お互いの主張が食い違うということが境界トラブルの典型例です。

そういった場合は妥当なところで手打ちをするか、専門家に調査してもらった線で合意するかで、問題は解決するはずです。

ただ、「妥当なところ」を決めるのは簡単でないことがありますし、「専門家に調査」してもらった場合でも、裁判をしないかぎり両者の合意が必要になります。

いずれにしても両者が合意に至るまでには、感情的な問題が大きく影響します。勝った・負けた、得した・損したなどの感情が大きく影響してくることが考えられます。

仮に専門家の公平な判断である筆界特定制度や、裁判(境界確定訴訟)で決着させしたとしても、結果に不満が残る当事者がでてくる可能性もあります。

法的に白黒はっきりさせたとしても、感情的なわだかまりができることもあるので、一筋縄ではいかないこともあります。

境界が明確でも…

もともとの境界が明確であるにもかかわらず、トラブルになることもあります。

例えば、相手側が嘘をついている場合や、越境して工作物が造られている場合、境界線をごまかすための細工がされている場合など、があります。

私が経験した事例の一つに近いのは後者の事例です。そのような細工をするのは、相手側が少しでも自分側の土地を広げたいという意思があるからです。

話が複雑になるのは、そういった細工がされてから長期間が経過しており、しかも行為者が他界して代替わりしている場合です。

このような場合、先代から引き継いだ当代は、それがたとえ間違ったことであるとわかっていても、先代が行ったことを否定したくないという感情を持っていることも考えられます。

あるいは、土地の境界問題とは別の問題で、相手側になんらかのネガティブな感情を持っていて、その埋め合わせをしようとしていることも考えられます。

常識的に考えると、間違ったことがなされているのが明確であれば、正しい方向へもっていくのが当然です。

しかし、こういった複雑な感情が絡んでいるとスムーズに解決されないこともあります。

このような当事者にとっては非常にデリケートな問題が潜んでいることがあることから、単純に元の境界が明確なので一律に線引きをして一件落着、とはいかないことがあります。

そのようにして短期間で形式的に線引きをしてしまうと、一方の当事者に感情的なしこりが残ったままになる可能性があります。

話がこじれてうまくいかないときは、最終的には司法の判断によって解決せざるをえませんが、こういった感情の問題が存在することがあります。

些細なことも大きな問題に思える

境界の位置をめぐって見解の違いがあったとして、その相違が数センチほど、あるいはコンクリートブロック一つ分の厚さ(10センチ)ほどであった場合、細かなことを気にしない人であれば、どちらでもいい些細なことのように思えるのではないでしょうか。

土地の面積にもよりますが、人によっては20センチほどの差であっても、ためらいなく譲ってあげてもいいと思える人もおられるかもしれません。

たかが数センチされど数センチ

不動産の専門家でもなければ、実際の現場を見てみれば数センチ~10センチほどの差は大した問題ではなく、そのようなことにこだわるのは恥ずかしいという思いすらあるかもしれません。

しかし、不動産関係の法令を見ていけば、些細な問題ではないこともあります。

例えば、土地に建物を建てようとすると、接道義務(土地が道路に2メートル以上接している必要がある)があったり、セットバック義務(道路の中心から2メートル後退させる義務)があったり、建ぺい率を満たす必要があったりすることがあります。

そういった基準を満たすかどうかの瀬戸際になった場合、数センチが大きな問題になってくることもあるのです。

そんな心配がいらないほどの余裕があれば大丈夫ですが、仮に面積に余裕があっても将来分筆して土地を小分けしたりした場合には…、などと考えていけばやはり数センチを粗末に扱えないのではないかと思えたりもします。

神経質になりすぎるのもよくありませんが、たかが数センチ、されど数センチということが言えるのではないでしょうか。

実害があるかで考える

少しの差をどのように考えるかということですが、実際に実害が生じるかどうかで考えるのがよいかもしれません。

実害とは、土地の利用に制限がかかるとか、土地の価値が大きく減損するなどのことです。

仮に自分の思い通りの結論にならないとしても、実害が生じないのであればこだわる必要はないのかもしれません。

本能的なもの!?

人は土地に対して縄張り意識のようなものを本能的に持っていると考えらえます。

少しでも他人に自分の陣地を侵されたくないという気持ちがあることから、土地の境界には敏感になりがちです。

また、人は自分の持ち分が減ったと感じることも嫌がる傾向があります。

土地に置き換えると、これまで目にしてきた自分のスペース(土地)が狭くなることは避けたいという気持ちがあります。

たとえそれがもともと自分の土地でなかったとしても、自分の土地のように思って長期間過ごしてきたのであれば、それを手放したくない気持ちが芽生えてきてもおかしくありません。

逆に考えれば、こういった本能的な傾向を客観視すれば、冷静な判断ができるかもしれません。

言い出しっぺが弱い立場になる!?

境界トラブルが未解決のままの状態が続いている場合、基本的に「境界をはっきりさせましょう」と言い出した側が弱い立場になります。

弱い立場というと語弊があるかもしれませんが、相手に話し合いに応じてもらったり、境界票を打ち込む際に立ち合いをしてもらったりなどの協力を求める、すなわち相手にお願いする立場になるということです。

それだけでなく、話し合いに応じてもらえなかったり、話し合いが決裂した場合など、国の制度や第三者機関を利用して解決を試みるとしても、それにかかる費用は、言い出した側が負担することになります。

したがって、言い出した側が解決に至るまでの手間や費用を負担するという形になります。

これに対し、言い出された側は、話し合いなどに応じるかどうかや、相手側の言い分に同意するかどうか決めるだけで済みます。

こういった立場の違いを利用して、少しでも有利に話を運ぼうとする人も存在するかもしれません。

しかしながら、無茶を通すことができるかというと、そうでもありません。言い出した側であっても卑屈になってへり下る必要は全くありません。

境界紛争解決のための制度を利用するなど方法はあります。最終的には、強制的に境界紛争を決着させる裁判という方法もあります。

こういった制度を利用するかどうかの決定権は、言い出した側にもありますので、そういった面も意識しておくとよいかもしれません。

おわりに

以上、境界トラブルを経験した後の雑感を感情の書かせていただきました。

冒頭でも触れましたが、境界トラブルの原因と解決法はトラブルの数だけ存在するといっていいほど様々だと思います。それぞれに合った解決方法があると思いますが、一つの事例として参考にしていただければ幸いです。

<関連記事>

土地の境界線トラブル|半世紀以上続いた境界紛争を話し合いで解決するために気を付けたこと

 

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