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経歴詐称は犯罪か?バレるとどうなる本当の学歴・職歴

公開日: : 最終更新日:2016/06/30 刑事法関連, 法律



有名人などが学歴などの経歴詐称をしていたことが判明して、ニュースになることが時々あります。

最近では、ある経営コンサルタントが真実でない学歴や、無関係の人物写真や実体のない会社名などをホームページに掲載していたとして、経歴詐称問題が世間では騒がれました。

学歴職歴などを詐称した経歴詐称をすることによって、どういった問題が生じるのでしょうか。

学歴や職歴などの経歴は、履歴書などに記載することがありますが、それは後々まで残る資料となります。

経歴詐称が判明した場合、法律上はどういった扱いになるのか、あるいは法律以外にはどんな影響があるのかなどについて説明していきます。

 

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経歴詐称の類型

経歴詐称には、大きく学歴詐称職歴詐称に分けられます。

それぞれについて少し説明します。

学歴詐称

学歴詐称とは、学業についての経歴について偽ることです。

学歴詐称には以下の2種類があります。

  • 高学歴を詐称
  • 低学歴を詐称

 

学歴を詐称するというと、自分に有利な方に嘘をつく、つまり高卒を大卒とするなど、「ない」学歴を「ある」ように高学歴を詐称するということをイメージしがちですが、そればかりではありません。逆もあります

それぞれについてみていきましょう

高学歴を詐称

こちらは最終学歴よりも上位の学校を経歴を詐称する場合です。

例えば、左側が実際の最終学歴とすると、

  • 中学卒業 → 高校卒業(中退)、大学卒業(中退)、大学院修了(中退)
  • 高校卒業 → 大学卒業(中退)、大学院修了(中退)
  • 大学卒業 → 大学院修了(中退)

 

などとするような場合です。

もちろん、「中退」や「科目履修生」や「聴講生」にすぎないのに「卒業」とする場合も学歴詐称に含まれます。

低学歴を詐称

こちらは本当の最終学歴を記載せず、それ以前の下位の学歴が最終学歴であるかのように詐称する場合です。

例えば、左側が実際の最終学歴とすると、

  • 高校卒業(中退) → 中学卒業
  • 大学卒業(中退) → 高校卒業(中退)、中学卒業
  • 大学院修了(中退) → 大学卒業(中退)、高校卒業(中退)、中学卒業

 

などとするような場合です。

この類型は珍しいかもしれませんが、過去に地方公務員の職員採用試験で大卒者に受験が認められていないにもかかわらず、受験したいがために「高卒」と詐称するといった事例がありました。

また、有名大学出身者が後に無名大学の大学院を修了した場合に、記載したくないという理由で最終学歴を大学卒業とする場合なども考えられます。

経歴詐称は犯罪か

職歴詐称

職務経歴とは、職務経歴についての詐称することです。

およそ以下のような内容を詐称することです。

  • 企業名
  • 官公職
  • 職業上の地位(職位)や資格
  • 職務の内容
  • 雇用形態
  • 在籍期間
  • 転職回数

 

例えば、就職活動や転職活動などの際に必要となる書類では、履歴書には「職歴」、職務経歴書には「職務経歴」を記載する際に問題となりやすい事柄です。

職歴について限られた文字数ですべてを正確に表現することは不可能ですが、以上のような点に虚偽の事実が書かれていると職歴詐称になります。

 

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法律上の問題

経歴詐称をした場合、法律的にどういった問題があるのかについて説明します。

軽犯罪法違反になりえる

軽犯罪法1条15号は以下のように規定しています。

第一条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

 

十五  官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者

経歴詐称に関しては以下が問題になります。

  • 官公職・・・公務員の官名、職名のこと
  • 学位・・・学士、修士、博士など学位規則に定められた称号
  • その他法令により定められた称号・・・弁護士、弁理士、医師や学校教育法に定められた称号など
  • 外国におけるこれらに準ずるもの・・・外国において上記3つに準ずるもの

 

公務員であることを名乗ったり、学位や上記資格がないのにあると詐称することについて規定されています。

上記以外の資格についても、それぞれの資格について規定された法律に罰則があれば、その法律によって処罰されることがあります。

罰則

上の条文には「拘留又は科料」という罰則が規定されています。

拘留」とは、1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置される刑罰です。

科料」とは、1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収される刑罰です。

これらの刑が科された場合は、もちろん前科がつきます。

実際には、経歴詐称をしただけで刑罰が科されるのはレアだと思われますが、経歴詐称は「軽犯罪」とはいえ立派な「犯罪」として位置づけられていることは心に留めておいたほうがよいでしょう。

詐欺罪?

刑法上の詐欺罪(刑法246条)になるのは、お金や財産的価値のある物やサービスを得るために「欺く行為(あざむくこうい)」をしてそれらを騙し取った場合です。

例えば、価値のない物を価値があると嘘をついて、高い値段で売りつけるといったような場合です。

単に自分の経歴を詐称しただけでは、財物を得るために欺く行為をしたとはいえないため、通常詐欺罪が成立するということはほとんどないと考えられます。

例えば、就職活動で経歴詐称をして入社したとしても、入社させてもらうこと自体はお金や財産的価値のある物やサービスとはいえないため、詐欺罪にはなりません(給与や賞与は、通常労働の対価と捉えられています)。

ちなみに、「学歴詐欺」や「職歴詐欺」などとといわれることもありますが、この時の「詐欺」は法律用語の「詐欺」ではありません

私文書偽造罪?

履歴書などの文書に虚偽の経歴を記載した場合に、私文書偽造罪が成立するのかとの疑問についてですが、結論的には成立しません

私文書偽造罪は、無断で他人名義の文書を作成した場合など、「名義」を偽ることで成立しますが、自分名義の文書の「内容」を偽ってもこの罪は成立しません。

したがって、自分の経歴を詐称した文書を作っても私文書偽造罪にはなりません。

ちなみに卒業証明書を偽造して学歴詐称などをした場合には、その学校が私立であれば私文書偽造罪および同行使罪、国公立であれば公文書偽造罪および同行使罪になりえます。

不法行為責任が発生しうる

故意(わざと)または過失(うっかりして)によって職歴詐称をしたことで相手側に損害が発生した場合、不法行為に基づく損害賠償請求をされる可能性もあります。

公職選挙法違反になりえる

国会議員選挙地方議員選挙候補者などが当選目的で経歴詐称をした場合については、公職選挙法235条で「虚偽事項の公表罪」というものが規定されています。

第二百三十五条  当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

この罪は、選挙の結果(当選・落選)に関わらず成立します。

経歴詐称は犯罪か?

法律以外の問題

法律以外で影響のある問題としては、さまざまなものが考えられますが、大きく以下のものが考えられます。

  • 信用失墜
  • 職場の懲戒処分
  • その他の責任

 

それぞれについて簡単に触れます。

信用失墜

経歴詐称がバレた場合には、やはり周りの人からの「信用を失う」ということが大きいでしょう。

事実とかけ離れていればいるほど、信用を失う度合いが大きくなります。自分の経歴について「ウソをつく人」という評価をされれば、大人として、社会人として、非常に不利な状態になります。

職場の懲戒処分

企業などの職場の就業規則服務規程などに、経歴詐称をしたことに対しての規定があれば、懲戒処分をされる可能性があります。

懲戒処分にはさまざまなものがありますが、例えば重いものから順に

  • 懲戒解雇(免職)
  • 諭旨解雇(免職)
  • 停職
  • 減給
  • 降格
  • 戒告(譴責)

 

といったものがあります。

悪質度合いに応じて処分も重くなる傾向にあります。

その他の契約責任

職場の懲戒処分のほかに、本人や本人以外の人にも契約上の責任が発生することがあります。

例えば、雇用関係を結ぶ時に経歴詐称が発覚した場合について特別に定めていた場合や、人材紹介会社が紹介した人材に経歴詐称が発覚すれば紹介料を返金するなどの保証契約を企業が結んでいた場合などです。

さいごに

以上、経歴詐称の種類や、法律上と法律以外の問題などについてでした。

ほんの軽い気持ちでついたウソが、後々大きな問題を引き起こすといったことは実際に考えられます。最初の軽いウソを正当化するために嘘に嘘を重ね、後に引けなくなってしまうなんて状況には、間違ってもなってはいけません。

また、経歴詐称がバレることを恐れてビクビクしながら生活するなんてことは不幸です。

当然のことですが、ありのままの経歴だけを書いて正直な人生を送るのが一番です。

 

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