自分の家やマンションの敷地内、あるいはその周辺に誰のものかわからない自転車が放置されている場合、どのように処分すればいいのか困りますよね。

特にマンションやアパート、お店を経営されている方の中には、駐輪場に放置されているいわゆる「放置自転車」にお困りの方も多いと思います。

そんな放置自転車は、自分の判断で処分してしまってよいものなのでしょうか。

勝手に処分してしまった場合、後で所有者が現れたりすると面倒なことになったりすることも考えられますし、法律的に何か問題があるのではないかと心配にもなります。

公道上であれば別ですが、私有地内に放置自転車がある場合、どのように処分すればいいのかについては実のところ、法律で明確に規定されているわけではありません。

ですから、どうすることがベストな方法なのかについて、はっきりとした答えがあるわけではありません。

しかし、私有地内の放置自転車は日々撤去され、処分されていっています。

ということで、放置自転車を処分するには、どういった方法があるのかや、法律的な問題点などについて考えていきたいと思います。

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放置自転車とは?

そもそも放置自転車(ほうちじてんしゃ)とは何?ということですが、法律的に明確に定義されているわけではありません。

もっとも、駅前などの自転車放置禁止区域に停められた自転車を撤去したりすることを定めた「自転車放置防止条例」のようなものであれば、持ち主がいなくて直ちに移動させることが出来ない自転車、というように定義されていることがあります。

この場合の意味であれば、数時間どころか数分であっても放置自転車になりえます。

しかし、マンションやアパートの駐輪場の放置自転車というのとはニュアンスが少し違いますよね。

つまり、この場合は、持ち主がわからないまま、長期間駐輪されている自転車ということではないでしょうか。

長期間とはどのくらいかということもはっきり決まっているわけではありませんが、とにかく誰も使用している形跡がなく、ずっと放置されている自転車ということだと思います。

この記事では、放置自転車の意味をこちらの意味で使うことにします。

放置自転車の処分

放置されている場所はどこ?

放置自転車といっても、どこに置かれているのかによって対処方法が異なってきます。

駅前の歩道上など公共スペースに置かれている放置自転車は、その場所を管理している地方自治体や鉄道会社が対処すべき問題で、利用者は苦情を言うことくらいしかできません。

私人レベルで問題になるのは、私有地付近の公道上に置かれている場合と、自分の敷地(私有地)内に置かれている場合の放置自転車です。

これら二つに場合分けして考えます。

私有地付近の公道上の場合

私有地付近の公道上に自転車が放置されている場合は、その道路を管理する役所に申し出ることで対処してもらうことができます。

例えば、国道であれば国土交通省、県道であれば県庁、市道であれば市役所といったように、それぞれの役所のホームページに担当窓口が書かれていればそこへ、わからなければ代表電話にでも電話を入れて申し出れば対応してもらえます。

典型的な手続きとしては、黄色い札のような警告票をその自転車に1週間ほど取り付け、変化がなければ撤去するという流れになります。

これらは予め決められた規定に則って行われますので安心です。

私有地内の場合

問題は、自分の敷地内つまり、私有地内に放置自転車がある場合です。

この場合、基本的にお役所や警察は、手を出すことは出来ません。

なぜ手を出せないのかというと、土地の所有者(借りている土地の場合は借地人など)と自転車の所有者という私人同士の問題だからです。

まず盗難車でないかの確認

ただ、その自転車が盗難車であるなど刑事事件と関わりがある場合は警察が対応する問題になります。

ですから、私有地内に放置自転車がある場合は、持ち主を探してみて見つからない場合は、まずは盗難車でないか確認するのがよいでしょう。

確認は、警察官が行ってくれます。その土地がある地域を管轄する警察署へ連絡すれば、警察官が調べに来てくれるはずです。

防犯登録などを調べた結果、盗難届けが出ていて盗難車であることがわかれば窃盗事件となり、警察で持ち主を調べて返却されることになります。

もし盗難届けが出ていない場合は、他の刑事事件に関係しているといった事情でもない限り、警察では基本的に対処してもらえません。

民事不介入(みんじふかいにゅう)の原則というやつですね。

ここから先が少し悩ましいところになります。

防犯登録番号があれば、登録されている所有者のデータがあるので、所有者を教えてもらいたいところですが、通常教えてもらうことはできないようです。

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方法は二つ

私有地内に放置された自転車は、

  • あとで取りに来るつもりで放置しているのか
  • 捨てるつもりで放置していったのか
  • 放置したこと自体を忘れているのか

 

それぞれの状況によって法律的にできることが違ってくるわけですが、自転車にそのことが書かれているわけではありませんし、放置自転車の存在だけでは一体どれにあたるのか判断できません。

しかし、そういった事情がわからない状態でも処分されていっているのが現状です。

どのように処分するかということですが、二つの方法があります。

  • 自分で処分する
  • 放置自転車回収業者に依頼する

 

業者に任せる場合は、費用がかかりますが、専門業者であればノウハウがあるので一まず安心できるかもしれません。

もっとも、信用のない業者であれば後々トラブルの元になることがあるかもません。

では、自分で処分する場合はどうでしょうか。

専門業者の場合は、自転車に「一定期間経過後もこの札が付いている場合は廃棄処分します」旨書かれた札を取り付けて、1~2週間ほど待ち、それでも札がついたままの自転車は撤去して別の場所へ移動し、さらに1ヶ月ほど保管するといった手続きをしているところもあるようです。

もっとも、撤去・処分するための手続きは、法律に規定されているわけではありません。

それぞれの業者さんが独自に基準を決めて行われているだけです。

ご自分で廃棄処分される場合も、これに準じた方法でされるほうが安心かもしれません。その際は、きちんと各自転車の車体番号や防犯登録番号などを控えて、管理しながらやるとよいでしょう。

自分のものにしてもよいのか?

放置自転車を廃棄処分するのであれば、自分のものにしてもいいのではないか?という疑問が出てくるかもしれません。

確かに捨てるのであればもらいたいという気持ちはわかります。

また法律上も放置車両自転車を所有者のいない物(動産)として「所有の意思をもって占有すること」で「所有権を取得する」と解釈できる余地があります(民法239条1項)。

しかし、それでもトラブルになる可能性もあります。

それは、その自転車の所有者が現れた場合や、その後盗難届けが出された場合に、盗難(窃盗)の疑いをかけられたり、あるいは放置自転車を勝手に自分のものにしたということで占有離脱物横領罪の疑いがかけられたりする可能性があることです。

そのようなことがありますので、自分のものにするということはやめたほうが無難だと考えられます。

また占有離脱物横領罪については、以下の記事に詳しく書いていますので、よろしければ参考にしてください。

占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)とは?窃盗罪との違いは?

 

考えられるリスク

放置自転車を処分してしまった後に考えられるリスクは、レアケースだと思いますが持ち主が現れて「自転車を返してほしい」と言ってくることです。

このような場合、業者さんに依頼していれば、その業者さんに引き取ってもらった旨伝えて、あとはその業者さんにお任せすることができます。

放置自転車自転車回収の専門業者であれば、そのあたりのノウハウもあるはずなので安心できます。

しかし、自分で処分した場合はどうでしょうか。どのような反論が出来るのかは結構難しい問題です。

まずは、どの自転車であるのかを特定し、所有者と名乗る人物が本当に所有者であるのかを証明してもらうことからはじめるとよいかもしれません。

単に自分が所有者であるということを言っているだけでは、何ら証明したことになりません。

自転車の販売証明書防犯登録の記録などの証拠を求めましょう。

その上で、私有地内の管理権は所有者(借地の場合は借地人)にあることを伝え、関係者以外が置きっぱなしにしていることは不法占有であり、損害賠償の対象になることや、自転車の処分にかかった費用の請求もできることを主張するとよいかもしれません。

処分にあたっては、猶予期間を定めて警告票を貼り付けていたなど、持ち主へ配慮した手続きをしていたことなども伝えるとよいでしょう。

それにもかかわらず、取りに来なかったのだから仕方がないと主張することもできるでしょう。

また、不法占有による損害賠償額処分にかかった費用の合計と、その自転車の当時の価額とを相殺してチャラにしてはどうかと提案するということも考えられます。

ここまでになると、お互いの話し合いで納得してもらうしかないでしょう。

さいごに

放置自転車の処分方法や法律的な問題などについて考えてきました。

私有地内の放置自転車についての処分については、法律的にあいまいな部分もあります。

ご自身でされるのが不安な場合は、業者さんに依頼する方法もありますので、状況に合わせて選んでみてください。

<関連記事>

放置バイク・放置自動車の処分方法!トラブルを防止するには

占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)とは?窃盗罪との違いは?

 

 

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