車やバイクを運転していてイヤな思いをすることの一つが煽られることです。
煽り運転は、それ自体が危険なことはもちろん、煽られている側に恐怖や心理的プレッシャーを与え、平常心で運転できないようにしてしまう非常に危険な行為です。
この記事では、煽り運転にあってしまった場合にどのように対処すべきかなどについて考えていきます。
Contents
煽り運転とは
煽り運転への対処法の前に、煽り運転について確認しておきます。
煽り運転の態様
煽り運転は、主に車間距離を縮めて後ろにピッタリとついて走ることとされています。
これに加えてライトをハイビームにしたり、パッシングをしたり、クラクションを鳴らしたりといった行為が付け加えられることもあります。
このように車間距離を縮めて運転することは交通違反になります。
煽り運転は交通違反!
走行中の車間距離について道路交通法26条では、
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
と規定されています。
同じ方向を向いて走っている車両の直後を走るときは、前の車が「急に停止したとき」でも追突しないように「必要な距離」(車間距離)を保つ義務があると規定されています。
「急に停止したとき」とは、判例によると前の車が急ブレーキをかけて止まった場合だけでなく、何かにぶつかってブレーキをせずに急に止まった場合も含むとされています。
ですからいくらブレーキ性能がいい車でも車間距離は十分にとる必要があります。
そして「必要な距離」とは、停止距離(空走距離+制動距離)と解釈されています。
具体的にどのくらいかは書かれていませんが、車の停止距離の目安が
- 時速30kmで14m
- 時速60kmでは44m
- 時速100kmでは112m
程度とされています。
ですから、スピードに応じてその程度の距離をとる必要があると考えられます。
罰則は?
以上の規定に違反した場合には、車間距離を保持する義務に違反したことになります。
これには罰則があり、一般道路と高速道路で反則金や点数が異なります。
- 高速道路上 : 三月以下の懲役又は五万円以下の罰金(道路交通法119条1項1号の4)
- 一般道路上 : 五万円以下の罰金 (道路交通法120条1項2号)
もっとも交通反則通告制度がありますから、通常は車間距離不保持として
- 高速道路上 : 違反点数2点、反則金9000円(普通車)
- 一般道路上 : 違反点数1点、反則金6000円(普通車)
という処理がされることがほとんどです。
煽る側の心理とは
まず自分を防御するためにも想定しておくべきことは、相手が病気その他の影響で正常な状態にないかもしれないということです。そういった場合は常識が通用しませんのでまずは離れることに集中したほうが安全です。
それ以外の場合、煽り運転をする人はなぜするのでしょうか?
その心理状態について考えてみると、以下のように分類できると考えます。
スピードを上げてほしいと思っている
制限速度を下回る速度で走っている車に対して、もっとスピードを上げてほしいと思っている場合です。
このケースはかなり多いと考えられます。それまで制限速度上限以上で走ってきたような車は、前に制限速度を下回る速度で走っている車が現れると非常に遅く感じてイライラしている可能性があります。
とにかく急いでいる
急いでいる場合です。スピードを上げてでも早く目的地に着きたいと焦っているようなケースです。
そのような心理状態になっていると、前を走る車は邪魔な存在にしか見えなくなっているのかもしれません。
より早く走ってくれるか、道を譲ってくれることを期待して煽っていると思われます。
割り込まれたことを怒っている
割り込まれたことなどに腹を立てている場合です。
怒っているということをアピールするために、車間距離を取らずに走り続けていることが考えられます。
つまり、早く走ってほしいというよりは、嫌がらせ目的の可能性があります。
自分のペースを守りたい
その他にありがちなケースとしては、自分のペース守りたいといったような場合です。
例えば、普段のペースで走っていれば「あの信号」には引っかからないはずなので、いつもどおりのペースで走行したいと思っているような場合です。
よく走っている道であれば、信号のパターンはある程度わかりますので、「あの信号」は長いとか、引っかかったことで次々と連鎖的に信号に引っかかってしまう羽目になる、といったことを考えているのかもしれません。
当然ながら、以上のような心理状態は、さまざまな車両が走る公道においては身勝手なものです。
ですが、煽る側がおおよそどのような気持ちになっているのかを知っておくことで対策が立てやすくなるのではないでしょうか。
煽られた時はどうすべき?
煽り運転は身勝手な行為ですが、自動車やバイクを運転していると、初心者・ベテラン、運転が得意な人・そうでない人問わず、誰もが遭遇しうる行為といっても過言ではありません。
そんな煽り運転に遭遇した場合には、どのように対処すればいいのでしょうか。
対処法
普通に運転しているにも関わらず煽り運転をされた場合は、相手に非があります。
しかし、運転中は相手のそれを指摘できる状態にありません。
考えうる対処法としては以下のものがあげられます。
気にしない
運転中に煽られたとしても、直接何か危害が加えられているというわけではないので、気にせず安全運転をするのが原則です。
普段通りの運転を続けている間に、煽ってくる車両がいなくなったというのがのが一番いいかもしれません。
道を譲る
しかし、しつこく煽られたりすると追突の恐れや、事故に巻き込まれる恐怖を感じて運転に集中できないということもあるでしょう。
また、放置しておくと相手が余計に興奮してより危険な行為に出てくるとも限りません。
そんな時は、安全に注意して道を譲りましょう。
違反行為をしている相手と同じ土俵には決して立たずに、危険を避ける意味で先に行かせることが得策です。
ドライブレコーダーに記録しておく
事故やトラブルの時に備えて、後方にもドライブレコーダーを装備して録画しておくというのも有効です。
車両後方には、「ドライブレコーダー搭載車」「前後方録画中」などのステッカーを張っておけば、より有効かもしれません。
安全な場所に停車して警察に連絡する
トラブルになった、あるいはなりそうな場合は、最終手段として安全な場所に停車して警察に連絡をするということも頭に入れておきましょう。
警察に連絡するかどうかは、人や物に危害が加えられた、あるいは危害が加えられる危険が迫っているかどうかで判断するとよいでしょう。
やってはいけないこと
やってはいけないことは、相手を挑発することです。相手と同じ土俵に立って戦おうとしてはいけません。
そのようなことをすれば、自分自身が交通違反者になってしまいかねませんし、それ以前に事故の危険が増し、非常に危険です。
自分や他人の生命や身体を傷つけてしまう恐れがありますし、自分が加害者となって重い責任を負ってしまいかねません。そのようなことになれば、元も子もありません。
カッとならないために
頭ではどう行動するのがベストかがわかっていても、その場の心理状態によっては冷静になれないこともあるかもしれません。
人間は感情に大きく左右される生き物です。しかし自分の感情をコントロールできなければいけません。
運転中に冷静でいられるように、覚えておいて損はないことを列挙してみました。
運転中は負けるが勝ち
運転中は決して戦ってはいけません。
運転の目的は安全に目的地に到着することであって、煽ってくる相手と戦って勝つことではありません。
相手を勝たせることが安全につながるのであれば、負けることが最大の勝利です。「運転中は負ければ負けるほど自分にプラス」というくらいに気持ちでいてもいいかもしれません。
事故になれば自分が損をする
感情的になって事故を起こせば、一番損をするのは自分です。
重い責任を負いますし、社会的信用もなくなります。
これまで築いてきた信用も一瞬のうちに崩れ、人生が台無しになります。
事故になれば多くの人に迷惑がかかる
事故を起こせば自分の問題だけでは済みません。
関係する多くの人が悲しみますし、迷惑がかかります。
家族だけでなく親戚や友人、先輩・後輩、上司・部下、お世話になった人等々、自分に関係する人たちは思いのほかたくさんいます。
さいごに
煽り運転の心理や、された場合の対処法などについてでした。
自動運転が当たり前になればこういった問題はなくなってくるのかもしれませんが、まだまだ当分の間は人間の運転が中心になると考えられます。
自分には全く非がなくても煽られてしまうことがあります。自分に非がない時こそ、感情的にならないように気をつけなければいけません。相手が正常な状態にないことも想定しておくべきです。
人対人で出会えば何らトラブルにならないのに、車対車で出会った時にはケンカ腰になってしまうというのは残念です。
「人対人で出会っていればどんな展開になったのかな?」などと考えをめぐらせるくらい気持ちに余裕をもって運転したいものですね。
運転している目的を見失わないように、安全運転を心がけていきましょう。
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