夫婦で違う名字(苗字)にしたい!という意見が以前から根強くあり、夫婦別姓(ふうふべっせい)制度を導入すべきだということがいわれてきました。
現在の法律では、夫婦は同じ姓にしなければいけないことになっていて、ほとんどの夫婦は男性(夫)側の姓にしているという現状があります。
こういった現状に対して男女平等の点で問題があるとの指摘や、改姓した側は以前と違う名字になったことで、仕事上の取引相手などとの関係で同一性を保てないなど、社会生活上の混乱が生じて不都合であるなどの点が指摘されてきました。
このような問題意識から、夫婦別姓制度が検討されてきました。
追記:
最高裁大法廷は2015年12月16日、夫婦別姓を認めない民法の規定(民法750条)は憲法に違反しないという判断をしました。この点については「さいごに」で少し触れます。
夫婦別姓制度とは?
夫婦別姓制度とは文字通り、夫婦で別々の姓(名字(苗字))を名乗ることができる制度のことをいいます。
ちなみに法律上は、姓ではなく「氏」というように規定されています。
夫婦別姓制度には以下の3パターンがあります。
- 夫婦同姓を原則とし、例外的に夫婦別姓を選択できるもの
- 夫婦別姓を原則とし、例外的に夫婦同姓を選択できるもの
- 夫婦同姓・別姓を対等なものとして選択できるもの
1.と2.は、それぞれ一方を原則となる制度に決めて、他方を例外的に扱うというものです。
3.は、どちらかを原則とはせず、並列的に選ぶことができる制度です。1.や2.のようにどちらかを原則として決めてしまうと、例外となる制度を選ぶことに少しプレッシャーを感じる方がでてくるかもしれませんが、このように並列的であると、選ぶ側は比較的自由に選びやすいといえます。
導入が検討されているのは、この3.の制度で、これを選択的夫婦別姓制度(せんたくてきふうふべっせいせいど)といいます。
事実婚との違いは?
カップルで別々の姓を名乗りたいのであれば、婚姻届を出さないままにしておくという方法もあります。事実上の婚姻、いわゆる事実婚ですね。
当然ながら、婚姻届を出さないと法律上は夫婦として認められません。法律上の夫婦として扱われない場合に問題となってくるのは、主に以下の点です。
- 子どもの扱い
- 遺産相続
- 配偶者控除
まず1.ですが、事実婚で子どもができた場合、そのカップルの間にできた子どもは非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と扱われ、いわゆる婚外子になります。
2.遺産相続については、いずれかが死亡した場合、法律上の夫婦であれば配偶者に相続権がありますが、事実婚の場合は原則として相続権はありません。
また子どもができた場合、その子どもは認知(にんち)という手続きをしていない親からは原則として相続することはできません。
3.ですが、一方が会社員などの場合、事実婚ならもう一方は配偶者控除を受けることはできません。
事実婚の場合、法律上夫婦として扱われないことから、以上のような点に影響が出てくるわけですね。
また、籍を入れていないということからくる親兄弟、親戚や世間からの評価が気になる方もおられるかもしれませんね。
子どもの姓はどうなるの?
夫婦別姓制度が導入された場合、子どもの姓はどうなるのかということは気になりますよね。
その点については、まだはっきりと決まったわけではありませんが、過去の法制審議会の答申では、婚姻の際に子どもの姓はどちらにするかということを決めておき、子ども全員が同じ姓でなければならないという案があります。
その答申では一度決めた子どもの姓は変更できないのかというと、そうではなく家庭裁判所の許可など一定の要件を満たした場合には変更できるとされています。
この答申通りになるかどうかはわかりませんが、法律改正時にはこれに近くなる可能性は考えられます。
いつから導入されるの?
夫婦別姓制度を盛り込んだ法律改正案が成立したわけではありませんので、導入されることが決まったわけではありません。
これまで何度か夫婦別姓制度導入のための民法改正案が国会へ提出されてきましたが、いずれも可決されるには至りませんでした。
夫婦別姓に関係する裁判が最高裁判所で行われていますが、その結果しだいでは、法律改正への流れが一気に進む可能性も考えられます。
さいごに
夫婦別姓制度の導入には、当然ながら反対意見もあります。
日本の伝統である家制度の崩壊や家族の絆が弱まること、子どもの混乱などを心配する声もあります。
制度が導入される際には、そのような声にも十分配慮しつつ慎重に決めていって欲しいですね。
追記:
冒頭でも書きましたが、夫婦同姓を定める民法の規定について最高裁は憲法に反しないという判断をしました(この判断に携わった15名の裁判官のうち、5名(うち3名は女性)の裁判官は違憲であると主張)。
しかし、最高裁でこういった判断がなされたからといって夫婦別姓制度が否定されたというわけではなく、夫婦別姓制度を新たに作ること自体を否定したものではありません。
憲法の趣旨を踏まえてどういった法制度を作るかは国会に委ねられていますので、今後も夫婦別姓制度についての議論は見守っていく必要があります。
この判決の同日に同じ最高裁で再婚禁止規定の違憲判決も出されました。これについては以下の記事に書いていますのでよろしければ参考にしてください。
歴史学習の中から云えることは北条政子のように将軍の妻(後に尼将軍)と言われる人に代表される人は、生まれつきの氏を守り切っていること。和宮も徳川や源氏姓を名乗っていないこと。等の例のように夫婦別姓で当たり前が日本の伝統ではないのか。細川ガラシャの例は生きた時代が秀吉の時代で有り、謀反人明智の姓はさすがに名乗れなかったとみて良い。
また、別の観点で見ると教員など結婚すると姓が変わるのはやりにくいだろうし。外から未婚か既婚か見分けられてしまうのもやりにくいだろう。
結婚時女性は姓を変えるのが当たり前と言う事になっています。少子化で一人っ子が多く、一人しかいないのに、女の子は、資格名、戸籍など多数の変更手続きを結婚時強いられ、自分の慣れ親しんだ氏や家族を放ってまで、結婚し、仕事家事、子育て、相手の親の老後の面倒など強いられるので、結婚に魅力がないのです。それで、資格取得した優秀な女性達は、結婚したがらない状態です。また、氏が無くなるので、家が滅びることを恐れ、親も姓名を次ぐ子供が居なくなるので嫁に行かせたくないのです。これでは、ますます少子化が進みます。